誰もが幼い頃、ウルトラマンやドラえもんといった特撮やアニメを夢中になって見た経験があるだろう。怪獣が暴れまわり、ヒーローは変身、巨大化し、豪快な必殺技や超ハイテク技術を駆使してこれに立ち向かう。そんなスペクタクルなシーンに心奪われ、強い憧れを抱いた人も多いと思う。今日も数多くの作品が世に出ており、大衆の広い支持を得ている。
そんな人々の心を惹きつけてやまない特撮やアニメの世界。しかし冷静にその世界を眺めて見ると、明らかに科学の法則を無視した不可解な現象が起きている。
特撮やアニメの世界で常識となっている現象は、果たしてどこまで正しいのか。無理に実現したらどのようなことが起こるのか。そんな素朴な疑問に対し、多少強引ながらも科学的な見地から検証を試みたのが「空想科学読本」である。ちなみに「空想科学」とは、特撮やアニメなどの世界を指す。
本書「空想科学読本3」は、約3年振りとなる、シリーズ3巻目である。本書では、「アニメ『アルプスの少女ハイジ』の大ブランコはジェットコースターよりも怖い」、「空想科学世界の最強は『キン肉マン』の脇役だった」、「『必殺!仕事人』で使われる凶器はなぜ三味線」、「暴れん坊将軍が彗星を発見、江戸時代に可能か?」など、全31の空想科学の真実が明らかにされる。
前2巻は主に、ウルトラマンや仮面ライダーといった、誰もが知る空想科学の花形に焦点が当てられていた。それに比べると、今回はインパクトに欠けたかもしれない。しかし、決して内容で劣っているわけではない。一見地味なテーマばかりに思われるが、前回以上に意外な発見があり、驚くことは多い。また、今回初めて時代劇にまで空想科学の世界を拡大した。全体を通して、これまでにない斬新さが評価できる作品である。
空想科学読本の特徴として著者の着眼や発想の奇抜さが挙げられる。普通ならば何気なく流して見る場面にも常に疑いの目を持つ。そして、次々と読者の意表を突くテーマを見つけては、独自の視点から検証を試み、結論を導き出していく。現実と空想の見事なまでのギャップに、ついつい笑ってしまうのだ。例えば、『アルプスの少女ハイジ』のオープニングでハイジが大ブランコに乗っているシーン。著者は、これを見て、ブランコがやけに長くはないかと疑問を抱く。それから著者独自の検証が始まる。まずビデオを借りてきて、往復時間を測定。そこからロープの長さを出すと何と40メートル近いことが分かる。そして最高速度は時速79キロに達することが判明。ジェットコースターよりも怖いと証明されるのだ。だが、これでまだ終わらない。さらに40メートルのブランコを支える木があるのかなど、新たな疑問に発展していく。
科学的な話をいかにわかりやすく読者に伝え、興味を持ってもらうか。それを真摯に考える著者の工夫も見られる。例えば、理科系の知識のない人でも物理現象や数値を容易にイメージできるよう、数式は使わず、具体例を挙げながら砕いた言葉で説明している。また、注釈も充実しており、辞書的な説明だけでなく、著者の感想や著者自身の経験談も含まれていて、ここを読むだけでも面白い。全体的に、理詰めの文章にありがちな堅苦しさがなく、科学の本が苦手な人にも読みやすい。
著者柳田理科雄氏は、東大を中退後、学習塾を経営するも不振が続き、その赤字を埋めるために執筆活動を開始。処女作「空想科学読本」で一躍注目を浴びた。
柳田氏は、決して空想の世界を否定してはいない。科学と夢は表裏一体。夢が科学を発達させ、科学が夢を現実に導く。科学も及ばない人間の想像力の豊かさを再確認することが、本書の真の目的であるという。すでに第4巻の執筆も予定されている。次はどんなテーマで空想科学の謎に迫ってくれるのか期待したい。