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見事現役合格を果たした新2年生の合格体験記
ライバルを蹴落とせ!!
工学部H・K

受験生特集号4面・その他

牛小屋が第2食堂?

牛小屋が第2食堂?

 全然わからなかったらどうしよう。落ちたら親や先生になんて言い訳すればいいのだろう。混乱したまま前期試験当日がやってきた。あふれてくる不安と緊張を必死で抑え試験会場へ向かった。

 到着したのは試験開始の1時間前。早過ぎたようだ。控え室とやらに行こう。最後にもう少し勉強しておきたい。第2食堂という建物が控え室となっているらしい。地図を見ながら私は歩いていった。しかし物が食べられるような建物はどこにもない。かわりに牛小屋を発見した。さすが東北。のどかだなあ。試験の前に牛を見て心を和ませよう。私は牛小屋に近づいていった。しかし様子がどうもおかしい。よく見ると、牛のかわりに大量の人間が詰まっていた。この牛小屋が第2食堂だったらしい。東北大に来るということはすなわち牛小屋で食事をするということである。あまりのショックで目眩を覚えた私は、その場でぼーっと突っ立っていた。

 しばらく呆然としていた。いつのまにか大勢の人がやってきている。時間になり教室が開場された。しまった。勉強するのを忘れていた。一生の不覚。とりあえず教室に入る。

 私の席は1番前だった。この時点でもう落ちたと思った。試験のとき、最前列に座ってしまうと試験官の動きが気になり問題に集中できないものである。なんだかもうどうでもよくなってきた。適当にやって帰ろうと思った。

 そのときだった。左からどすっという音がした。隣りの席の人が来た。すごく頭がいい人だったらどうしよう。ゆっくりと顔を上げてその人を見た。デブだ。すごい。椅子からかなりはみだしている。しかも非常に落ち着きがない。奴は、きょろきょろあたりを見まわしつつも、常に貧乏ゆすりを忘れない、高いレベルの挙動不審さを持った男だった。非常に気になる。こんなのが隣りに座って集中できるわけがない。

 もうだめだ。私は思った。それと同時に試験が始まった。

 隣りのデブは明らかに私を敵視していた。私のほうをちらちら見ながら、すごい勢いで鉛筆を走らせているのだ。奴はきっと、私よりも速く記述することによって「俺はおまえよりも頭いいんだぞ。受かるのは俺だ」と私に訴えかけているに違いない。私は本当に焦った。私が負けじと奴より速く文字を書くと、彼はさらに鉛筆のスピードを速めた。これは私への挑戦だ。絶対に負けるわけにはいかない。

 いきなり奴が手を挙げた。「すいません。暑いんですけど」ここは仙台。季節は2月。こんなことを言う奴はまずいないのだろう。「うーん。それは困ったねえ」試験官は本当に困っていた。私との勝負に熱くなりすぎたのか。バカめ。そのまま集中力を分散させて落ちてしまえ。「仕方ないな。じゃ、好きに移動していいから」何!試験官の許しを得、奴は机ごと私の方へにじり寄ってきた。涼しい空気の流れの中に身を置こうと数分おきに大移動を繰り返している。…気になる。どうしたらいいんだ。いや、負けてたまるか。私は彼を威圧することだけにすべての神経を集中させ、ひたすらに手を動かした。英語、数学、2日目の物理、化学もデブとの闘いが続いた。隣りとの対決に夢中になっているうち、気がつくと試験はすべて終わっていた。

 前期試験を終え、家に帰ったが日が経つにつれ、後悔の気持ちが大きくなってきた。試験本番で馬鹿なことをしてしまった。あの時、隣りにデブが座りさえしなければ、あいつが私に挑戦してこなければ試験に集中できたのに。試験後から合格発表まで私の精神状態は最悪だった。後期試験も東北大を受けるつもりだったが、もはや勉強が手につくような状態ではなかった。後悔でいっぱいで合格発表までの日々を何もせずぼーっとして過ごした。

 いよいよ発表の日。仙台までわざわざ行くのは面倒なので、自宅でインターネットを使って発表を見ることにした。チェックすべきなのはあのデブと私の受験番号である。もし私が落ちていてデブが受かっていたら…。ネットがつながった。結果を見る。私の番号がある。しかもデブの番号はない。夢か。違う。最高の結果だ。万歳!歓喜で狂ったように私はしばらく飛び跳ねていた。何があっても必死に頑張れば受かるものだ。が、自分が受かっていることがわかるとだんだんデブがかわいそうになってきた。

 ごめんなさい。  


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