センター前日の夜、突然の発作に襲われた。「どうしよう、どうしよう、どうしよう!」これからどうすればよいのか皆目わからない。誰か助けて!そして迷惑にも、同じくセンターを受ける友人に思わず電話をしてしまった。
「大丈夫だよ、今更何しても無駄だし。」彼女は言った。そうか、と納得した私は電話を切った。「今更」!何という力強い響きだ。その言葉を胸に、私は腹を括ってさっさと寝た。
いよいよセンター本番。「今更」を心の支えにして落ち着いて試験を受けた。落ち着きすぎて数学で時間が足りなくなった程だ。ともあれ「今更」という魔法の呪文で実力を遺憾無く発揮でき、結果は概ね好調であった。なんてすごいんだ、「今更」!
センターで、私は消耗した。こんなかわいそうな私にご褒美をあげたい。ちょっと休暇をとることにした。これは大失敗だった。1度甘くすると付け上がるのが、人間。申し訳程度に勉強する、絵に描いたようなダメ受験生に堕ちた。どうせあと何日あってもたいして勉強しないんだ。それなら、さっさと2次終われ!と、いつしか心のどこかで思うようになっていった。
待ちに待った2次試験がやってきた。1日目の英語・国語は得意科目だけあって好調。ふふ、どうだ恐れ入ったか。2日目は友人が素敵なプレゼントを携えて激励に駆け付けてくれた。プレゼントの中身はねぎらいの手紙、私の好物の羊羹、エロ本「江戸艶本を読む」。「終わったら読んでね。でも、帰りの地下鉄とかで読んじゃだめだよ」彼女は言った。数学嫌いの私にとって数学の試験など、終わったも同然である。無意味すぎる数式たち。それよりも借りた胡散臭いエロ本のほうが気になる。気になる。気になる!
そうして、全入試日程が終了した。全てのしがらみから解放された私は、自由であることの居心地の悪さを感じた。どうしよう。もう「今更」という言葉は使えなくなった。もう全てが「これから」なんだ。とりあえず家に帰ってからゆっくりかつ密やかにエロ本を読んだ。今も昔も変わらず、エロ本にはしょうもないことしか描かれていないのがよく分かった。
発表の前日は眠れなかった。友人と発表を見に行く。何故か文学部の周りだけ人がいない。掲示板を見る。私の番号がある。見間違いかもしれないので、友人に確認を求める。こういう時は念には念を入れることが肝要だ。やはり合格らしい。が、周りが妙に静かだ。つられて私もローテンションになる。何事もなかったかのように友人と街に遊びに行った。
日が暮れた頃、一応学校にも報告しに行った。しょぼい高校であるだけに大騒ぎである。校長室に連行され、校長の訓示まで聞かされた。うざい。著しく気分を害された。うっかり家に電話するのを忘れてたら、親から学校に電話がかかってきて先生に呼び出された。親はカンカンだった。こんなめでたい日に怒るとは何事だ。と思ったが、めでたい日なので逆ギレは控えた。
こうして私の受験は終わった。勉強してた時もあったし、してない時もあった。そして私は合格した。この事実の意味することはつまり、適当にやってりゃなんとかなるってことだ。人生なんてそんなもんだ。