模擬裁判開催現在の労働状況に警鐘過労自殺がテーマに
十一月十日・十一日、本学川内記念講堂において、法学部模擬裁判実行委員会主催による第五十回模擬裁判が行われた。今回の公演では、過労自殺をテーマとして扱い、タイトルは「心、尽きる~過労自殺・命より大切な仕事って何ですか~」であった。 (313号)
過労自殺とは、仕事上での過労・ストレスによる自殺をいう。残業・休日労働などの肉体的負担や、重い責任・ノルマなどの精神的負担により鬱病にかかり自殺に至るケースが多い。性別、年齢を問わず、労働者であれば誰にでも起こりうる問題である。昨年には、企業側の責任を全面的に認める最高裁判決が出され、過労自殺は実務家の間で注目を集め始めている。しかし、遺族は社会的偏見や企業からの圧力により自殺の事実を公にしないため、過労自殺は一般にあまり知られていない。
裁判劇は、過労自殺した大沢浩二の娘・映美が父の死を明らかにしようとする場面から始まる。映美の勧めにより、浩二の妻・圭子は、夫の勤め先であった岩本工業を被告とする損害賠償を裁判所に提訴した。原告は被告に対し、浩二の責任や労働時間を減らす等の安全配慮義務を怠ったとして、慰謝料を含む金八千五百四万千八百二円を請求。一方、被告側は浩二の自殺の原因となった鬱病は本人の性格から引き起こされたものであり、過重労働に関しても浩二本人の意思によるものであると主張した。
法廷外のシーンでは、新婚夫婦や労働者同士が過労自殺が起こる背景・原因、過労自殺をなくすにはどうしたらいいのか、意見を交わす場面が演じられた。また、全体を通して劇は労働者側の立場から行なわれたが、このシーン中では企業側の主張も盛り込まれ、観客に過労自殺についての理解を深める配慮がなされていた。
裁判は、原告の請求が全面的に認められる判決となる。裁判官は自殺の原因は過重な責任や労働によるものであるとして、被告に安全配慮義務の債務不履行に基づく浩二の死亡による損害賠償を認めた。
この裁判劇で争われた事例の労働状況は現実でもよく見られるものであった。従って、本来なら原告の全面勝訴とはならない可能性が高い。しかし、敢えてこの判決としたのは、日本の現在の労働状況を根本から考え直してもらいたいと、警鐘を鳴らす意味を含めてのことだという。
今回の公演を振り返って、模擬裁判実行委員長の蒲沢雄亮さん(法学部三年)は「過労自殺という問題はあまり世間に知られていないため、公演前の反応は良くなかった。しかし、公演を見てもらい、過労自殺についてよくわかったという意見をもらえた。過労自殺を知り、考えてもらいたいという目標は達成できたのでよかったと思う」と語った。
