たべるたべるごはん挑戦する食卓冬の優しさ・ブリ大根
それは、しんしんと雪の降るある寒い日のことだ。僕はいつもの様に授業をさぼり、自宅のこたつで丸くなっていた。眠気が覚めないままふとテレビに目をやると、お昼の料理番組をやっていた。献立は「ぶり大根」。僕はたちまちテレビにくぎ付けになった。 (314号)
「ぶり大根」、それは代表的な冬野菜である大根と脂がたっぷりのったぶりを、鍋でじっくり煮込んだ料理である。ご飯との相性が抜群な上に、酒のつまみにも最適である。こんな寒い日に食べるぶり大根は、さぞかし美味くて体が暖まるだろう。僕は早速、材料を買いに外へ飛び出した。
ぶり大根の調理は、大根を輪切りにして下茹ですることから始まる。それと同時に、ぶりに塩コショウをふって十分程度放置する。その後、ぶりが白くなるまで熱湯をかけ、塩コショウを落とす。下茹でした大根は、細かく切った生姜やぶりと一緒に、カツオでだしをとったお湯に入れて、弱火でじっくり煮込む。
大根がやわらかくなった頃を見計らって、砂糖と醤油で味付けをする。あくまでもぶりの味で勝負するため、量は控えめにするのがコツだ。そして煮込みの過程で最も重要な仕事、それは灰汁をとることだ。細かい作業だが、この労を惜しんでは美味いぶり大根はできない。大根に味が充分染み込んだら、最後にお酒をかけてついに完成である。
できあがったぶり大根は、炊き立てのあったかご飯と一緒に食べることにした。まずは大根から。しっかりと煮込んであるので、さほど力を入れなくても箸がとおる。中を見てみると芯まで狐色だ。湯気の立つ大根を一切れ、口の中へと運ぶ。ハフハフ、熱い。でも、すごく美味い。大根の中に染み込んだだし汁が一気に口の中に広がる。最高だ。次はぶりに箸をのばす。いい香りを放っていて、それだけでご飯が食べられる。口に入れると、その濃厚な味が舌を包みこむ。もうたまらない。
それから僕は無我夢中で食べまくった。ご飯も何杯おかわりしたか分からない。気がつくと、鍋いっぱいに作ったぶり大根はすっかり無くなっていた。僕はしばらく余韻に浸っていた。ふと鍋を見ると、だし汁が少し残っている。これを捨てるのはもったいない。
幸い炊飯器の中にはご飯がまだあったので、雑炊を作ることにした。水を少々加え、ご飯を入れて煮込む。火を止める前に卵をかけてできあがり。名づけて「ぶり雑炊」だ。
ぶりの味と脂が染み込んだ雑炊は僕の胃袋を優しく満たしてくれた。僕の体は充分に暖まり、鍋を洗う指先もあまり冷たくない。なんだか心も暖かくなったようだ。これから寒さはまた一段と厳しさを増す。暇と金があったらまた作ろう。今度は酒も用意して。
