東北大学新聞:

シリーズ国立大学法人化東北大学再編①文部科学省による改革と揺れる国立大学

 本年三月、文部科学省の調査検討委員会が国立大学の独立行政法人化に関する最終報告を行った。これによれば、二〇〇四年度から全国の国立大学が一斉に「国立大学法人」として生まれ変わることとなる。(316号)

当紙では全六回に渡り、独立行政法人化・大学改革について特集を行う。第一回目となる今回は現在までに進んでいる大学改革の全容について解説する。

 現在、国立大学には世間から厳しい視線が向けられている。戦後、国立大学は「学問の自由」を理由に、教育や研究面に関して社会からの評価を受けることがなかった。また、経営面からも完全に国からの保護を受けてきた。こうした状況のもと、学生の教育や社会の要請にこたえるような研究にはあまり目を向けてこなかった。

 事実、一九九九年に科学技術庁が行ったアンケートでは三分の一に及ぶ企業が「大学の研究スピードが遅い」と答えている。また、スイスの国際経営研究所(IMD)でも、日本の「高等教育水準」を主要四十九カ国中最下位に格付けしている。

 しかし、その国立大学が文部科学省の進める構造改革によって大きくその姿を変えようとしている。二〇〇四年度から実施される独立行政法人化(以下、独法化)と二〇〇一年、遠山敦子文部科学大臣が国立大学協会に対して発表した「大学の構造改革の方針」(遠山プラン)による改革プランである。

 この一連の改革で国立大学は、その研究や教育に関し、国民からの厳しい評価、市場競争に晒されるようになる。そのため、国立大学には今後、学生により良い教育を行うこと、社会のニーズにあった研究を行うことが求められるようになる。

 さらに、文部科学省が今まで持っていた国立大学の予算編成権・人事権が大学側に委譲される。大学運営の自主性が広がることで、研究環境の向上につながるだろうというのが改革推進派の主張である。

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現在、個々の大学の授業料や付属病院からなどの収入はいったん、すべて国の収入となる。そして、文部科学省が各大学の要望を踏まえて、国の財源からの予算配分を行っている。国から支給された予算はすべて使途が特定されており、大学側が自由に予算を使うことができない。

 しかし、独法化により、授業料や付属病院などの収入はすべて個々の大学の財源となる。さらに、国から支給される予算も大学側の裁量に基づき、自由に予算配分ができる。

 また、大学の教職員はすべて非公務員となり、兼職や転任など自由に行えるようになるほか、優秀な海外の人材を学部長や学長にすることも可能になる。

 さらに、文部科学省ではこの国立大学の独法化を基盤として、「遠山プラン」による大学の構造改革を一層推し進める方針である。

 この「遠山プラン」では今後国立大学の統合・再編を進めること、全十分野別に研究実績評価の高い上位三十校に対して予算を重点的に配分するといういわゆる「トップ三十」構想が示された。従来の独法化による改革案よりもさらに踏み込んで、大学経営に市場の競争原理を取り入れようとする形である。

 今後文部科学省によるこれらの構造改革が進めば、厳しい財政状況に陥り、他大学との吸収合併を余儀なくされる国立大学が現れることも考えられる。そのため、現在、独法化後の経営強化をにらみ、全国で国立大学の統合が進んでいる。二〇〇三年度秋までの統合を正式に決定している国立大学は全国で十二組にも及ぶ。東北地方でも弘前大学・岩手大学・秋田大学が、統合に向けた協議を始めている。

 しかし、こうした文部科学省による改革案に異論を唱える声も多い。大学関係者の中では、直接的な経済的利益のない文学・哲学分野が切り捨てられる可能性を危惧する声もある。

 さらに、将来的に大学の授業料が大幅に値上げされる可能性がある。これによって、低所得層の大学入学が困難となり、大学教育が高所得層に限定されてしまうだろうという指摘がなされている。

 今回の構造改革で逆に文部科学省が国立大学に対して、統制を強めるのではという懸念も一部から持たれている。「トップ三十」の決定や各大学への運営予算の交付を通して文部科学省の国立大学に対する監察が強まるのではという警戒からである。本学でもこのような点を「学問の自由」の侵害だとして、一九九九年に一部学生が川内北キャンパスの講義棟前にバリケードを張り、独法化反対のストライキを起こした。

 現在までの大学改革は賛成派の意見が先行して行われてきた。これからは反対派の意見をどれだけ改革に反映されていくかが注目される。

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