東北大学新聞:

産学共同開発プロジェクターのワイヤレス化実現画期的な画像圧縮技術を応用

本学未来科学技術共同研究センター、大見忠弘教授の研究グループの学生八人が、新しい技術を用いたワイヤレス方式の「ネットワークデータプロジェクター」を開発した。この開発は、シャープとベンチャー企業のアイ・アンド・エフとの共同で行われた。 (316号)

プロジェクターとは、スクリーンに映像を映し出す機械である。パソコンの画像をスクリーンに映し出す場合、従来のプロジェクターでは、パソコンにケーブルで接続させ、画像データを送信する。それに対し、今回開発されたものは、圧縮されたデータをパソコンからプロジェクターにワイヤレスで直接送信する。その後、それを元に再びプロジェクター内の専用プロセッサーで復元するものである。

これにより、わずらわしいケーブル接続が解消されるうえ、多くの人が一台のプロジェクターにアクセスすることや、複数のプロジェクターに同じ画像を同時投影することが可能となる。

 ワイヤレスプロジェクターを実現するためには、パソコン上の画像データを高圧縮率で圧縮しながら、画質劣化を極めて少なくできるような画像圧縮技術が必要とされる。

そこで、このプロジェクターでは、「ベクトル量子化技術」と呼ばれる新しい画像圧縮技術を利用することで、高圧縮率、高画質で静止画像を圧縮、復元できるようにしている。

この新技術では、まず送りたい画像を十六画素(マイクロブロック)に分解し、そのブロックの色調パターンを「コードブック」と呼ばれる基本パーツと対応させる。次に、より原画像に近いコードブックの認識ナンバーを、データとして送信するという方式で、画像データの数字化をはかっている。

 また、この技術の導入は、ある一定の基本パーツ(コードブック)を用いるため、あらゆる画像への対応を可能にしている。

さらに、「適応解像度処理」と呼ばれるシステムによって、画像に対して臨機応変に対応することが可能となり、ブロックの粗密度合いによって圧縮率を変えることができる。つまり、画像の細かいところよりも、粗いところをより圧縮するシステムである。これにより、画像データを三百分の一以下に圧縮することができる。「現在一般的な静止画像圧縮技術である『JPEG方式』と比較しても、圧縮率、画質の両方で性能が上回った」と大見教授は話す。

 現時点では、データ画像を送信する際に、画面に表示されるまで一秒あまりかかる。そのため、今後の課題として、処理速度の短縮があげられる。よって、なるべく少ないコードブックで画像を翻訳し、基本パーツを減らすことで、圧縮率を上げる必要がある。また、圧縮率を上げる際に、画質が落ちないようにすることも必要とされる。「画質の良し悪しは人間の美的感覚に訴える。これからの時代は、その人間の感性、認識を数学的に分析、解析し、表現していく段階だ」と大見教授は語る。

 さらに、今は静止画像のみを扱っているが、将来的には動画についても利用可能になる予定だという。

 また、今回の開発は企業との共同研究という形をとったが、そのことについて大見教授はこう語った。「新しい学問、技術を人の世の役に立てるのは、大学の役目であり意義である。そのためには、その技術を製品化して、世に出す必要がある。そういう意味で、企業との提携は非常にメリットがある」。

 このプロジェクターを利用すれば、会議、ディベートなどで、多くの人のデータを一つのスクリーンに随時表示することができ、会議の質を上げることができる。この製品の発売は、今月二十五日に、一台八十万円前後で予定されている。

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