東北大学新聞:

本学医学部付属病院遺伝子治療計画を発表難病治療に大きな期待

 本学医学部付属病院の土屋滋教授グループは、X連鎖重症複合免役不全症(X‐SCID)の患者に対して、遺伝子治療を実施する計画を発表した。 (316号)

この病気は、遺伝子欠損による先天的なリンパ球の欠如・異常のために、細菌やウイルスに対する抵抗力がなく、治療が行われなければ生後一年以内に死亡する重篤なものである。      

 従来、この病気に対する治療として、主に骨髄移植が行われてきた。しかし、患者の家族内に、骨髄提供者を見つけられる確率は高いとは言えない。また、仮に骨髄移植が成功しても、生涯にわたり薬剤の補充療法を受ける必要があるなど、多くの問題点があった。

 それに対し一九九九年から、パリのネッカー小児病院で、フィッシャー博士らが、X‐SCIDに対する遺伝子治療を開始。良好な成績を収めているとの発表があった。本学医学部は、同博士から遺伝子治療に関する詳細な情報提供を受け、今回の治療計画を立ち上げるに至った。

 今回計画されている治療法は、患者の骨髄から造血幹細胞(血液を造る大もとの細胞)を取り出し、試験管内でその遺伝子欠損部位に遺伝子導入を行い、点滴で再び患者の体内に戻す、というものである。この治療を行うことにより、生涯にわたり正常機能をもったリンパ球が供給される。その結果、患者が生まれつき備えていなかった免疫機能が回復する。

この遺伝子治療は、本人の骨髄のみを利用するため、他人の骨髄の移植による拒絶反応の可能性がない。しかも、一回の治療だけで免疫機能が生涯にわたり身に付くため(治療後の定期検診は必要)、優れた治療法として注目されている。

二〇〇二年四月現在、この遺伝子治療を受けた患者は世界に五人で、それぞれ十分な効果が見られている。ただし、BCGなどの生ワクチン摂取者には、ひ臓が膨張するという免疫反応が現れてしまうため(骨髄移植の場合も同様)、事前の注意が特に必要になるという。

本学では現在、この治療法が国の基準に適正であるかの調査を厚生労働省に申請中であり、許可が下りれば、正式な治療法として認可されることとなる。

 この遺伝子治療の持つ将来的な可能性について、本学医学部付属病院の久間木悟助教授は、「現時点では、今回の治療法があらゆる疾患に対して可能といえる段階には達していないが、X‐SCID以外の重症複合免疫不全症への応用が可能か検討している。近い将来、遺伝子治療が一般の治療の一つとなるよう今後も研究を重ねていきたい」と語っている。

Copyright (C) 東北大学新聞