男の食卓「フライドチキン」
フライドチキンは奥が深い。ただ揚げればいいってものじゃない。店によって味がまったく違ってくる。 319号
ケンタッキーのチキンは高価だが絶品だ。一人で十ピース食うのが、鬱発症時の唯一の心の慰めになったりする。でも、先月の鬱は長かった。おかげで俺の財布の中身は、ほとんどがカーネルサンダースの懐に消えた。
それから、しばらくは貧食のチキンに頼った。だが、あそこは安さに比例して、チキンが干物のようにカラカラだ。それでも、憂鬱さに任せて貪り食っていたら、それを買う金すらもなくなった。
それからは地獄だった。金を貯めるために大好きなチキンを我慢しなければならず、KFCの前を通る度に暗澹たる気分に悩まされた。鬱のためにチキンを食うのか、チキンの為に鬱になるのか。訳がわからず、生きている実感も湧かなかった。
それからしばらくして、ぜいたくはできないもののそこそこの財産ができた。ケンタッキーは高価なので、貧食やサンマリ、ファミマのものを試したが、昔ほどの充実感は味わえなかった。
そんな時、新装開店したCoCoで百円のチキンと出会った。そのボリューム、ジューシーさ、俺は思わず空を仰いだ。幸せってやつは、何とも安くて、しょうもないもんなんだな。
