東北大学新聞:

シリーズ国立大学法人化 東北大学再編 受験戦争から受験生獲得戦争へ

少子化による十八歳人口の減少とともに、大学進学志願者も一九九二年の五百五十九万人をピークに減少の一途を辿る。二〇〇九年には全国の大学の受け入れ人数が実際の進学志望者数を上回る、いわゆる「大学全入時代」が到来すると言われている。こうした社会背景の中、大学や受験生の姿も変化しつつある。変化しつづける大学の姿を追った。 321号

十月、激化する大学間競争の象徴とも言える二つの出来事があった。21世紀COEプログラムの第一回目の発表と筑波大学・図書館情報大学、山梨大学・山梨医科大学の二組みの国立大学の統合である。

一連の大学改革によって、これまで国の庇護下のもとに置かれていた日本の大学に厳しい市場競争の原理が導入されつつある。その流れをさらに進めているのが、少子化による学生数の減少である。

 実際、既に短期大学を中心に入学試験で定員割れを起こす大学が続出している。二〇〇二年度、一部の学部で定員割れをした国公私立大学は全体の三十五㌫にも及ぶ。大学進学自体が困難であった「受験戦争」の時代から、誰でも進学が可能な大学の大衆化の時代に変わりつつある。

 そんな中で、大学選びにこだわる受験生も多くなった。長引く不況で大卒の就職率も低迷を続ける。いい大学を卒業したからといって就職先が見つかるわけではない。そんな思いから、受験生の意識も多様化し、自らの志望する専攻の将来性や実学の重視する方向へと変化しつつある。

 一時期、人気傾向にあった大学のIT関連の学部も、アメリカでITバブルが弾けて以降、人気低迷が続く。それに反して、現在ではナノテクノロジーや環境、保険衛生学分野に人気が集まる。

受験生の実学志向も強くなっている。特に、二〇〇四年に全国で一斉に開設される法科大学院(ロースクール)に受験生の注目が集まっている。法科大学院は法曹関係者の養成機関として司法試験の突破を目指した教育を行う。本学でも法学研究科内で設置予定だ。従来、難関と言われていた司法試験への扉が大きく開かれるということが受験生の目には大きな魅力に映る。これによって、全国的に法学部の受験者数が増えている。

こうした受験生の動向に大学側や予備校産業も敏感に反応している。特に、二〇〇四年の法人化による独立採算制の導入によって、国立大学といえど、学生が集まらなければ経営難に陥る。学生にとって魅力ある大学を作らなければ、国公私立問わず、廃止・倒産は免れない。

そこで、各大学では、入試の多様化、学部学科の再編・新設など、学生の確保に躍起になる。入学試験では現在、筆記試験を課さないで面接や作文で合否判定するAO入試が注目されている。個性的な学生を選抜するという触れ込みだが、実際には、受験機会を増やすことでなるべく多くの学生を確保したいというのが大学側の本音だ。

また、現在全国の大学で学部学科の再編・新設が相次ぐ。二〇〇三年度に学科の新設を行う大学は全体で三十にも及ぶ。本学でも二〇〇一年の生命科学研究科、二〇〇二年の教育情報教育部・研究部や工学研究科の技術社会システム専攻、二〇〇三年設置予定の環境科学研究科など、新設ラッシュが続く。時代のニーズにあった、国際的にも魅力溢れた大学づくりを目指す。

一方、受験生を大学に送り出す予備校側もこうした受験生の意識変化や大学の動きに注目している。大手予備校・河合塾では二〇〇一年に、「大学ランキング」を作成した。従来の大学の格付け基準であった偏差値からではなく、ISI論文引用数や科学研究費の交付順位、専門家の意見などを総合化して評価を行なったものだ。素人にはわかりづらい大学の研究実績を少しでも、わかりやすい形で発信しようという試みである。

受験生はこうしたランキングなどを参考として、慎重に大学選びを行う。さまざまな受験生のニーズに合わせて、多様化を続ける大学を、もはや、偏差値のような一定基準で測れることはできなくなっている。

「もはやブランドや偏差値だけで大学が立ち回れる時代ではない。研究・教育で努力している大学だけしか今後は生き残れないだろう」と予備校関係者は語る。

大学が受験生を選ぶ時代から、受験生が大学を選ぶ時代へ。日本の大学には魅力が無いと、海外へ留学する受験生も少なくはない。本学が伝統的に掲げる「研究第一主義」が、世界的規模の大学競争の時代でどの程度通用するのか。今後の本学の取り組みが注目される。

Copyright (C) 東北大学新聞