東北大学新聞:

丼を制する者は大学を制する

時は平成。この太平の時代に乗り遅れた二人の漢がいた。今となっては旧世紀の遺物とも言える大和魂を心に秘めた二人であった。彼らは厚生会館、丼コーナーの全種類を制覇し、立身出世を目論んでいたのである。 321号

まず二人は入り口にあるメニューのサンプルを見た。「むっ、七種類しかない。これはいける」彼らは内に秘めていた自信を確信に変えた。

早速、注文を待つ列に彼らは並んだ。まるで不動明王のような恐ろしい形相で、順番が来るのを今か今かと、待っていた。

二人のうち、背の高い方が先に注文をし、そして一杯目を受け取った。一杯目は唐揚げ丼であった。甘口のたれのかかった唐揚げと、きざみ海苔だけというシンプルな丼である。その背の高い男は一杯目をもの凄い勢いで掻き込んでいく。ただ一言、「甘すぎる」と呟いただけで。

もう一人の男も、相方が食べ終わるころには、一杯目にかぶりついていた。この男、上背はそれほどでもないが、しかし、驚くほどの筋肉隆々な体をしていた。そして、目にも留まらぬ速さで丼を食らっていく。味噌カツ丼を食べているようではあるが、もはや、その原型はない。

背の高い男は既に二杯目に入っていた。カツ丼である。その食いっぷりから考えると、まだまだ順調なようである。最後に、また一言「薄味だ」とだけ呟いた。

筋肉男の方も二杯目に突入していた。マグネーズ丼である。「これはうまい。ハッハッハッ」と笑いながら食べている。だが、相変わらず驚異的なペースで食らっている。

豚マヨネーズ丼。これが背の高い男の三杯目である。まだ食べるペースは変わらないが、若干、苦しそうである。彼の胃袋は銀河系止まりのようだ。残念ながら、宇宙には及ばない。

なんとか三杯目を食べ終わったあと、彼はコーヒー休憩に入った。コーヒー?彼はあまり頭がよろしくないようだ。大食いするなら飲み物は厳禁のはずだ。コーヒー休憩から戻ってきた彼は、また一言呟いた。「宮崎あおいの応援があれば…」と。

そのときまでには、筋肉の方も三杯目のカルビ丼に入っていたが、さすがに箸が進まない。やはり、この挑戦は無謀過ぎたのだろうか。だが、この局面に及び、彼が不可解な行動をし始めた。彼いわく、秘孔を突き始めたのだ。すると、奇跡が起こった。彼の食べるペースが前以上に速くなったのだ。彼は、なんと筋肉だけでなくそういう道にも精通していたのだ。驚きである。

さて、背の高い男の方は気後れしながらも四杯目の親子丼を注文し、そして、戦っていた。彼は突然、「つわりって、こんなもんなんだろうな」と呟いた。どうやら、丼の匂いだけでも吐き気をもよおす、差し迫った状態にいるようだ。その証拠に十秒に一回は身悶えしている。

だが、彼は最後の力を振り絞り、親子丼との戦いに終止符を打った。彼は戦いに勝ったのである。そして、叫んだ。「敵将、討ち取った!」と。「おまえこそ真の三国無双よ!」と声を掛けてやりたかったのは、言うまでもない。

秘孔を突いた筋肉男の方は止まることを知らない。偶然、開催していた生協まつりで、づけまぐろ丼を買ってきて、相方とは裏腹に楽勝といった感じで軽々と、四杯目を平らげていた。恐ろしい男である。

かくして、二人は丼コーナーの全種類制覇を成し遂げ、さらに、づけまぐろ丼まで食い尽くした。だが、彼らはそれだけでは満足しなかった。なんと食後のデザートまで食べてしまったのである。最後に彼らの共通意見を載せておこう。「別腹は存在する」

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