書評 僕、はまじ 浜崎憲孝著
もしも自分の人生の一部が漫画化されたら、いったいどんな気持ちになるのだろうか。実際にそうなった人は少ないが、もしも家の近所の本屋にそんな自分の漫画がおいてあったら、私なら興奮してしまうかもしれない。321号
そんな漫画の登場人物になったのが、本書の著者である浜崎憲孝である。著者の名前だけを聞いて何の漫画か分かるだろうか。ヒントは著者の名字である。
名字が同じなので「釣りバカ日誌」の主人公を想像した人もいるかも知れないが、残念ながらそうではない。答えは『はまじ』である。そう、「ちびまる子ちゃん」の中でまる子のクラスメートとして登場する、あの『はまじ』である。漫画ではずっと小学三年生を演じている彼だが、現実の著者は今年で三十六歳になる。
本書はそんな『はまじ』こと浜崎さんの三十六年間の人生を赤裸々につづったものである。さくらももこが自分の人生の一部を漫画で書いているのに触発されて、著者はこのような本を出版しようと考えたのだそうだ。
ちなみに、なぜ彼に『はまじ』というあだ名が付いたかをご存知だろうか。実は『はまじ』というのは「はまちの養殖」から付いたあだ名だそうだ。しかし、どこから「はまちの養殖」が出てきたか、については本書のなかでは記されていない。まあ、どちらにしても個性的でダサいあだ名であることには変わりはないが。
著者の人生は漫画の中に見られるのどかなイメージとは違って、波乱万丈である。早くに父親を亡くしたこと。小学校のプールの授業を、海パン姿で裸足のまま校外に脱走したこと。漫才師を目指して、高校を中退して上京したこと。そして、西川のりおに直接会って弟子入りを志願して断られたこと。あと、洗濯屋ケンチャン(ノーカット)の思い出(何のことか知りたければ本書を見るべし)。
この他にも様々なエピソードがつづられてあるが、紙面の都合上、割愛させていただく。
この本には前述した部分など声を出して笑える箇所もあり、確かに面白い部分もある。しかし、本書は結局著者の人生を羅列してあるだけなので、
著者の自己満足に終わっている部分も否定できない。正直、「ちびまる子ちゃん」のネームバリューを悪用しているだけのようにも感じられる。この本を読んだ後に読者が本から得られるものは非常に少ない。
しかし、著者と同じように自分の過去を思い出して何かに記述する、というのは面白いことである。私も親や友達に聞いてやってみたのだが、子供のころの意外な自分を知って楽しくなった。著者も本の終わりで「この本を書くために、自分の過去を思い出す必要がありました。すると、よくあんなことをしたなあ、ということばかりで驚きました」と、自分の過去を思い出すことへの楽しさを述べている。
自分の人生を、さくらももこのように漫画化できればどんなに楽しいことだろう。文章だと自己満足で終わってしまうが、漫画にすることで自分以外の人(主に子供ではあるが)にも楽しんでもらえるからである。しかし、自分一人で楽しむ分ならこの本の著者や私と同じように文章化するだけで十分である。暇な時間があるのならば、一度やってみることをオススメする。
辛かった自分を哀れむのもよし。楽しかった自分を懐かしむのもよし。貴方の過去はきっと貴方に探してもらうのを心待ちにしているに違いない。
