東北大学新聞:

シリーズ 国立大学法人化 東北大学再編 最終回 学生の目から見た大学改革

少子化によって、大学は「冬の時代」を迎えつつある。経営難や統廃合に迫られた大学が続出する中、本学でも大学改革が進む。そんな大学改革を当事者である学生はどう捉えているのか。国立大学改革特集・最終回となる今回は、当部が行った学生へのアンケートの結果から本学学生の大学改革への意識を探るとともに、これまでの特集の総括を行う。 322号

改革の実感薄く
学生意識アンケート
当部では国立大学法人化のイメージ、本学の研究教育環境への満足度など複数の項目に対して本学学生の意識調査アンケートを行った。アンケートは選択回答式で、学生二百九十名から回答を得た。

▼ 国立大学法人化

 二〇〇四年、全国の国立大学が一斉に法人化される。これによって、国立大学は文部科学省の管轄から切り離され、独立採算による自由な運営が行われるようになる。

今回のアンケートではまず、この法人化に対してどの程度知識があるかについて質問した。この中で、「漠然としか知らない」との回答が最も多く55㌫。これに「法人化の事実は知っているが中身が分からない」(23㌫)「法人化の事実自体知らない」(11㌫)などが続いた。

これに対し、「専門的に知っている」(1㌫)、「ある程度知っている」(10㌫)など、法人化についての詳しい知識があると答えた学生は極めて少数派であった。法人化の情報に疎い一般学生の姿が改めて浮き彫りにされる結果となった。

続いて、法人化に対して抱いているイメージについて聞いたところ、多くの学生が法人化に対して否定的なイメージを持っていることが分かった。「授業料の値上げにつながる」との項目に対しては、「非常に感じる」(34㌫)「ある程度感じる」(39㌫)など、実に七割もの学生が授業料の値上げに危機感を抱いていることが分かった。また、「大学に将来的な不安を感じる」「文科系や基礎研究の切り捨てにつながる」とした学生それぞれ52㌫、50㌫となった。

多くの学生が法人化に対し、こうしたさまざまな懸念を抱く中、現在学生自治会などを中心に一部の学生組織が反対運動を展開している。二〇〇〇年には、自治会の呼びかけに集まった、一部の法人化反対派の学生が、川内北キャンパスの講義棟をバリケードを張って占拠し、大規模なストライキを決行する事件が起きた。

 こうした学生自治会の運動については「自治会の主張にも反対運動にも賛同する」が3㌫に対し、「自治会の主張にも反対運動のやり方にも賛同できない」という回答が最も多く54㌫。近年の学生の自治会離れの傾向が顕著に表れた結果だが、「自治会の主張には賛同できるが、反対運動のやり方には賛同できない」という回答も37㌫に及んだ。運動のやり方への賛成・反対はともかく、四割近い学生が法人化に反対する自治会の主張に共感していることになる。

▼ 大学と学生に意識の差

 また、本学ではこれまで国立大学法人化を見据えた、さまざまな大学改革を進めてきた。研究科の新設や新しい研究教育施設の整備、学生の教育サポート体制などが現在進められている。

しかし、こうした本学の大学改革の動きを実感しているかという質問に対し、「非常に実感している」(3㌫)「ある程度実感している」(34㌫)を合わせても四割に届かない。学生側の学内改革への認知度の低さがうかがい知れる。改革に躍起になる大学側と、本来その改革の影響を最も受けるはずの学生側とで意識のズレが露呈した。

 それに加え、現在の本学の研究教育環境や学生へのサポート体制などに対しても、不満の声を持つ学生が多かった。特に「学生に対する教育が行き届いている」とする学生は僅か23㌫であったのに対し、「教官に研究や教育のやる気がない」という回答は65㌫に達した。新カリキュラムの導入など、本学の進める制度的な教育改革が、実際の教育現場において十分な成果として未だ結実していないという現状が見え隠れする。

しかし、それとは対照的に「社会に対して開かれた大学運営をしている」とする回答は81㌫、社会的に役立つ研究をしていると感じている学生の数も57㌫となった。産学連携や地域貢献など、本学の伝統的な門戸開放の実績が学生からも評価された結果となった。

詳しいアンケート結果はこちら

大学の向かう先は
国立大学法人化。21世紀COEプログラム。第三者評価制度の開始。文部科学省の国立大学改革は「待った無し」で進む。

これまで、国立大学は文部科学省の庇護のもと、安寧とした運営をおこなってきた。年功序列型人事や閉鎖的な大学の環境は明らかに日本の研究や教育のレベルの低迷を招いてきた。大学の運営に競争原理を導入することで、研究教育のレベルを上げるのが、一連の大学改革の狙いだ。現在の膠着化した大学組織に対し、「今までの大学ではいけない」(松本宣郎文学研究科長)など、改革の必要性を感じるのは大学関係者も同じだ。

しかし、大学関係者や学生からは不安や疑念の声も相次ぐ。特に法人化に伴う新しい予算運営の制度に、大学関係者の不安が募る。現在、すべて国の収入となっている授業料や附属病院収入など外部収入が、法人化によって個々の大学で自由に扱うことのできる経費になる。法人化後は銀行からの借入も可能となり、資金調達が今後の経営上の課題となる。

私立大学とは異なり、国立大学にはこうした経営の経験もノウハウも無い。どの国立大学も当面は手探り状態から厳しい経営を強いられそうだ。「極端な赤字が続けば、需要が無くなったと判断され、廃止に追いやられる国立大学も出てくるだろう」(藤田宙靖・元法学研究科教授)との声もある。

法人化し、各国立大学で慢性的な経営難に陥るようであれば、そのしわ寄せが、研究や学生生活に押し寄せる可能性は否定できない。特に、採算性のない文科系研究や基礎研究の切捨てを危惧する声も学内では強い。本学では工学部が全学生の三分の一、科学研究費の四分の一を擁するなど、理工系研究重視の傾向が強い。ある本学の文科系幹部からも「本学は理工系の研究を偏重しすぎ。文科系の研究も大切にしてほしい」と不満が漏れる。

その一方で、学生にとって気になるのが授業料だ。今回のアンケートでも七割以上の学生が法人化による授業料の値上がりに危惧を抱いてることが明らかになった。法人化後は国が定める一定の範囲内で各大学が授業料を定める仕組みとなるが、今後、大学の経営難を補うため、授業料が値上がりに踏み切る大学も出てくる可能性がある。

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