東北大学新聞:

医学系研究科 岡本宏教授、紫綬褒章受賞 医学分野での功績を評価

本学医学系研究科の岡本宏教授が、二〇〇二年秋の褒章を受章した。岡本教授には、医化学の分野に貢献したとして、学術分野での功績を称える紫綬褒章(※)が贈られた。322号

秋の褒章は十一月二日に発表され、十三日に東京で受章式が行われた。岡本教授は、受章の感想を「自分のやってきたことが評価されるのは大変嬉しいこと」と話した。

 岡本教授の研究の中心は、細胞の生死のメカニズムを解明するところにある。細胞の急激な死の原因や再生の仕組みを、細胞自身の酵素や補酵素の働きからとらえている。

特に著名な功績として岡本教授は、インスリンを産生するすい臓の細胞が壊れる仕組みを解明した。インスリンは血中の糖度を下げるホルモン。インスリンの生産、体内への循環が正常に行われていないことが糖尿病の病因になる。

岡本教授は、インスリン産生細胞が、損傷した自らのDNAの修復をするための機構の中で、逆に細胞が死に至るというモデルを提唱した。このインスリン産生細胞が壊れる仕組みは「岡本モデル」として一九八一年に発表され、世界に認知されている。

岡本教授はさらにこの研究を進め、インスリンを産生する細胞を使い、REG遺伝子(細胞を再生させる遺伝子)を発見。この遺伝子から作られるタンパク質を推定し、実際に合成した。このタンパク質を、すい臓を切除し、インスリン産生細胞の減少したラットに投与する実験を行った。その結果、インスリン産生細胞が増加、再生することが実証された。

このタンパク質を使えば、インスリン産生細胞の減少した糖尿病患者の根本的治療が、原理的に可能になる。現在、アメリカ・ベルギー・ドイツにおいて人間への応用が目指されている。

岡本教授はこれからの研究について「例えばガン細胞の急激な増殖には、細胞を再生させるREG遺伝子が働いているのではないかと考えられる。細胞の生と死とガン化にはどこかに接点があるはずだ。その接点について明らかにしたい」と語った。

岡本教授は金沢大学医学部卒業。京都大学医学部助手、金沢大学助教授、富山医科薬科大学教授を勤めてきた。一九八四年から東北大学教授に就任。これまで、日本糖尿病学会ハーゲドーン賞、武田医学賞、第三十三回ベルツ賞を受賞している。

※ 年に二回、春と秋に、政府から贈与される五つの褒章の一つ。紫綬褒章は芸術・学術分野に功績があった人に贈られる。

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