東北大学新聞:

COE 東北大から世界に発信 採択された研究教育計画の紹介

昨年度十月、「21世紀COEプログラム」(旧称、トップ30)の採択結果が発表された。同プログラムは全国の大学を対象として優れた研究・教育計画を選抜し、重点的に資金を配分する文部科学省の計画。本学では四分野五つの研究・教育計画が選ばれた。採択された研究・教育計画には今後五年で、年間平均二億円の助成金が交付されることになる。今回採択された本学の五つの研究・教育計画の実相を追った。 323号

①「新世代情報エレクトロニクスシステムの構築」

情報・電気・電子分野においては拠点プログラムの、「新世代エレクトロニクスの構築」が採択された。このプログラムでは、ナノテクノロジー(NT)とインフォメーションテクノロジー(IT)を融合させた技術の研究を行っていく。高度情報化社会に即した技術の研究をするNT・IT融合研究教育拠点と、次世代の有能な研究者を育成するQIスクールがこのプログラムの中核となる。

NT・IT融合研究教育拠点は、工学研究科(電子工学専攻、電気通信工学専攻)、電気通信研究所、未来科学技術共同研究センターの中の、情報エレクトロニクスとそれを支える材料科学に関連する研究室から構成される。これらの研究室が電気・応物・情報系に拠点を置き、各研究室が交流を持ちやすい環境が作られる。このことで各々の研究室が連携して、半導体やデバイスなどのナノテクノロジーを基盤とした、パソコンや携帯通信などへの実用化を目的とした研究が行いやすくなる。

QIスクールは、創造性豊かで、かつ国際的な舞台で活躍できる人材の育成を目的としている。そのため、優秀な院生は博士課程後期を二年間で修了し、一年間海外で研究をすることができるカリキュラムや、海外の大学、企業などで勉学に励むスーパーインターンシップという制度を作る。また、世界から実績のある研究者を招き、院生を含め数十人ほどで意見の交換をするミニ国際会議も行っていく。

今年度、この拠点プログラムに交付される援助金は一億八千二百万円。この援助金はスーパーインターンシップなど、院生が学業に打ち込む際の経済的支援のほか、国内外からの教授、助教授若手研究者の雇用、拠点内における無線LANの設備や事務室などへの費用に充てる。

拠点プログラムリーダーの内田龍男教授は、COEに採択されたことについて、「とても名誉なことだと思っています。同時に、これまでに増して世界を相手に実績をあげなければいけないという責任も感じています」と述べた。

情報・電気・電子分野において、本学はメモリや半導体、液晶ディスプレイなどで世界的な実績を挙げている。今後も、世界最先端の研究成果が生み出されていくことが期待されている。

②「バイオナノテクノロジー基盤未来医工学」

生命科学分野では「バイオナノテクノロジー基盤未来医工学」が研究教育計画に採択された。工学研究科の佐藤正明教授(機械電子工学専攻)が統括責任者となり、医工共同の研究を行う。今年度は一億二千万円の補助金を獲得した。

本拠点では、工学分野で開発したマイクロ・ナノレベルの技術を生体に応用するバイオナノテクノロジーを研究する。ここで研究した成果を活用して、先進国がこれから直面する高齢化社会において健康に生きるための予防医学技術と個人に適した診断・治療技術の開発を目指す。

本学では、医学系研究科と工学研究科の共同体制によって医学・医療への応用技術の開発を行ってきた。今回のプログラムをきっかけに関係部局同士の連携を強化する。

研究を進めていく上でも、医工間の情報交換を頻繁に行うことは重要になってくる。この需要に応えるための環境整備の一例として、キャンパスが離れている医学系研究科と工学研究科をテレビ電話でつなげ、各々のキャンパスにいながら研究関係者の会議を随時開ける体制を築く。

今回のプログラムでは、研究だけでなく、人材育成も重視する。世界に通用する研究者を育成し、世界的な研究拠点の形成を目指す。教育面の新たな試みとして、博士課程後期の学生を対象とした二つの教育制度を導入する。

一つはノマディック教育制度である。海外の大学・研究機関に学生を派遣し、知見を深めさせる。このとき必要な費用は拠点プログラムが補助する予定だ。

もう一つは遍歴学生制度で、学生に医学系研究科と工学研究科のいずれの研究室でも研究に参加させることにより、医学と工学にわたる知識と研究手法を学ばせる。

これらの制度により、学生に最先端の技術や様々な研究現場を体験させ、広い視野をもった研究者の育成を図る。

また、経済的に学生の生活を援助するとともに学生に研究費を支給し、自主的な研究が可能となるようにする。

本拠点では、研究開発組織としての未来医療工学センターと人材育成組織としての医療工学研究科を設けて、五年間のプログラムが終了した後も研究教育の運営を発展させ、継続していく予定だ。

③「大分子複雑系未踏化学」

化学・材料科学分野で採択された「大分子複雑系未踏化学」の研究教育計画は、理・工学研究科問わず、化学に携わる人材を集め、研究教育する大規模な計画である。今までにも、理・工学研究科で共同の研究をすることはあった。しかし、この計画は、大分子というテーマのもとに計画をまとめた、画期的なものである。

大分子とは、高分子と通常の分子の中間(一ナノメートル~十ナノメートル)の大きさをもつ、複雑な構造をした分子である。この今回採択された研究教育計画は、対象の大分子構造を解析し、その性質を分析することを目的とする。また、大分子の一般的な合成法や、応用なども視野に入れている。

この研究教育計画では、こういった研究だけでなく、教育にも力を注いでいく。国際的に活躍でき、今後の研究を担う人材を育成するための、教育計画が用意されている。

一つは、学業に専念してもらうための、経済援助である。返還義務のない奨学金を受けている者を除いた、全ての博士課程院生に、最低でも毎月五万円を支給する。その中でも、論文引用数が多い等、優秀と認められた学生に対しては、毎月十万円の経済支援を行う。その他にも海外の連携大学(ハーバード、コロンビア、オックスフォード等)への留学の際にも支援が行われる。

二つめは、教育内容の充実である。外国人教師を招いての、化学をテーマとした小人数語学教育、他にも、国際学会での研究発表や討論などを、行うことがそれに当たる。

本年度、この研究教育計画では、予算を一億八千万円確保し、来年度は、三億円を見込んでいる。半分は研究費にあてられ、残りは学生への経済的支援や、外国人講師の給料といった、教育のために使われる。

今後の問題として、現在、理工一体の研究拠点が存在しない、というものがある。そこで、未踏科学フロンティアセンターという国際研究拠点を建設し、研究を継続・発展させる、といった構想も打ち出している。

④物質創生・材料化国際研究教育拠点

化学・材料科学分野で採択された「物質創製・材料化国際研究教育拠点」プログラムには、本学の金属材料研究所をはじめとした複数の研究科、研究所が参加する。拠点リーダーは金属材料研究所所長の井上明久教授が務める。

このプログラム採択の背景には、本学の長年にわたる材料科学研究の実績と、それに対する国内外における高い評価がある。さらに、金属材料研究所附属材料科学国際フロンティアセンターを核とした世界的拠点への発展性も採択理由のひとつとなった。

このプログラムは、世界的に高水準の材料科学若手研究者を育成することを主な目的とする。具体的な教育計画として、ポストドクターやスーパードクターの指導と、彼らの研究や勉学を経済的に援助することが予定されている。

 ポストドクターとは、博士後期課程を修了した学生のことである。英語による研究の提案と口頭試問、TOEFLの得点などを基にして世界中から優秀な人材を集める。またスーパードクターは、本学の博士後期課程の学生から学業成績、面接、修士論文などによって選ばれる。ポストドクターの定員は十名で選考は既に終わっている。スーパードクターの定員は五~十名を予定しており、今年四月から募集が始まる。彼らへの経済的支援として授業料、研究費用、国際会議への参加費などを含めて、ポストドクターには年間で最高一千万円、スーパードクターには年間で最高三百万円が支給される予定だ。

また、これらのポストドクター、スーパードクターに国際性を身につけさせるため、外国人教員を新たに三名加え、論文指導をはじめとし、普段の会話も英語で行っていくなど英語教育に力を入れる。

このプログラムでは優秀な学生を一流の研究者に育成するための教育と同時に、「特殊構造物質」と呼ばれる新物質の研究も行う。

特殊構造物質は、従来にない特性を持った物質で、ナノレベルで原子配列を操作して作られる。この特殊構造物質の例として、従来の金属より融点の高い金属が挙げられ、これを航空機のエンジンや発電所のタービンに用いることで、エネルギー効率の高い燃焼機関を作ることができる。

予算は五年間で二十三億円を申請した。まず初年度は二億一千万円が割り当てられ、その大半は教育計画に使われる計画だ。

⑤言語・認知総合科学戦略研究拠点

人文科学分野で採択された言語・認知総合科学戦略研究教育拠点では、文系理系を融合した新しい言語学の創生を目指す。人間同士のコミュニケーションにおける言語の獲得・運用・喪失の仕組みなどを解明し、さらに人間と会話できる機械への応用を目的としている。

計画のリーダーとなるのは、国際文化研究科の堀江薫教授である。計画を推進する担当者は計十四名。言語学分野を中心として、その他に心理・医・工学分野からも様々な人材が集まっている。医学部附属病院からは失語症や脳機能障害を専攻する研究者、工学研究科からは、ロボットに言葉を与える音声認識・音声合成技術の研究者などが参加している。

近年、人間の脳機能を容易に観測する技術が進展し、医学分野から言語の仕組みを調査することが可能になった。しかし、学問分野が壁となり、これまで全国的に文系理系が融合した言語分野の研究は例が少なかった。本学では、二年半前から複数研究科の共同研究を行なっていた実績があった。この研究が今回の計画の前身になっている。

さらに、この計画では脳機能学で得られたデータを、文系の言語学理論に照らし合わせ、それによって言語科学体系の再構築を行なうことも考えている。

この計画の研究が進めば、言語機能障害におけるリハビリテーションの進歩や、福祉マシンへの応用も可能となる。加えて、言語獲得の仕組みが解明されることによって、外国語教育が進展するなど多岐の分野にわたる貢献が期待される。

教育の面では優秀な学生を獲得できるよう、博士課程の学生に奨学金を授与することとした。さらに博士課程以上のポストドクターを対象に、研究費を補償している。また学生は、担当教授と相談の上、学問分野や専門を問わない教育を受けることが可能となっている。

予算は五年間で八億九千万円を申請した。まず、今年度分として昨年十月から半年で七千五百万円が助成されることが決定している。

本計画では、五年後のCOEプログラム終了後も研究を続け、研究の水準を高めて独立した言語認知科学の研究センターを設立したい考えだ。

これから五年間は、川内北キャンパス合同研究棟に全体的な拠点を持ち、研究打ち合わせの場、実験室などをそこに構えることになる。

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