東北大学新聞:

本学情報公開の現状 動物実験を巡る一連の動き

二〇〇一年五月二十五日、本学医学系研究科附属動物実験施設に、動物実験に関する書類ついての情報公開請求があった。請求をした仙台市の女性は、動物実験の計画書、実験動物の納品書などの開示を求めた。これに対し、本学は二〇〇一年七月二十三日に部分開示をした。 323号

しかし、請求者の女性は墨塗り部分が多いことを理由に不服申し立てをした。本学はこれを受け、開示部分の再検討をすると共に、十二月二十一日には内閣府の情報公開審査会に諮問した。二〇〇二年六月十一日に答申書が出され、それを踏まえて決定した新たな開示部分の内容が、七月十九日に請求者に送付された。この結果に不服の場合、請求者は訴訟を起こすことができるが、今回はそれに至ることはなかった。

今回開示を請求された情報の中でポイントとなったのは、請求された書類内に記載されている個人名、動物実験の目的・方法、実験動物の入手先の三点を開示するかどうかであった。

本学は、以下のような理由でこの三点について当初不開示とした。

まず、個人名や個人を識別できる情報を公開すると、無言電話などの嫌がらせや不当な圧力の矛先が個人に向くことになる。それがストレスになることはもちろん、研究という業務に支障をきたす可能性があるとした。

また、公開請求のあった動物実験計画審査願という書類は、その動物実験を実施するかどうかを審査するための書類なので、目的や方法を含む、その実験に関するあらゆる内容が細かく記されている。この書類はあくまで計画書であり、作成時ではまだ実験は行われていない。つまり計画書を全面公開してしまうことは、研究内容の公開に他ならなく、研究のアイデアの優先権を損なうことになるとした。

実験動物の入手ルートには、大学間でのやり取りや民間の業者からの購入など複数ある。大学関係では、納入先の研究者が嫌がらせや不当な圧力を受け、研究に支障をきたす恐れを懸念した。また、民間業者については、嫌がらせにより正当な利益を害する恐れがあるとした。さらに、過去にイギリスで動物実験の請負をする企業が、過激な動物実験反対者の圧力により倒産しかけた事例も挙げた。

これに対し、請求者の女性は次のような理由から、墨塗り部分の不当性を述べている。

国立大学は国民の税金で運営されており、公開の義務と説明責任がある。また、公開できないような実験内容であるとすれば、よほど知られては困るような実験ではないかと疑われても仕方ない。それに、日本には欧米のような違法な動物実験反対運動は発生していないし、一部の非常識な嫌がらせがあったからといって国民の知る権利そのものを否定することはできないはずである。

こうした女性の主張に対し、本学は情報公開審査会の出した答申にしたがって、新たな開示部分を決定した。答申書では先程の三点について以下のような判断をしている。

個人名については、嫌がらせによって直ちに研究に支障を及ぼす恐れはなく、国立大学の研究者にとって動物実験は職務遂行に当たることから開示すべきとした。

また、動物実験の方法・内容については、書類における実験内容の詳細な記述から、研究のアイデアが判明しうること、実験方法の器材や操作、手順などから研究内容が判明しうることを考慮し、それらのキーワードを含む部分の記述は不開示が妥当とした。

実験動物の入手先は、大学関係については、個人名と同様の理由から、開示すべきとした。また、民間の業者については、正当な利益を害される恐れがあるため、業者の判断にゆだねるのが妥当とした。

今回の情報公開を受けて、本学大学院医学系研究科附属動物実験施設長の笠井憲雪教授は、情報公開のシステムについてこう指摘した。

「国の行政機関である国立大学での動物実験は、国の業務扱いとなるため、その関連書類は行政文書の対象となり、これには公開の義務がある。しかし現代の競争社会では、研究内容を保護することは重要であり、行政機関に該当しない私立大学などには、公開の義務がないため、公平さに欠けるのではないか」

今回の情報公開では、研究内容の保護と国民の知る権利の両立の難しさが浮き彫りとなった。このバランスをどう取っていくかが、今後の情報公開の焦点となるだろう。

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