新聞部入部試験問題 国語
次の文章はある受験生の東北大学入試当日の行動について述べたものである。これを読んで後の問いに答えなさい。受験生特集号
その日の朝、仙台市内のホテルに宿泊していた彼はモーニングコールの音で目が覚めた。そう、今日は二月二十五日。憧れの東北大学の入学試験の日だ。
彼は身支度を済ませ、試験開始一時間前にホテルを出た。仙台市内は丁度一週間前に降った大雪のせいで路面が凍結していた。恐る恐る足を踏み出す。ツル。ドテン。豪快に滑った。不吉だ。しかし、それは今日一日起こることのほんの前触れでしかなかった。
彼が試験会場となる川内北キャンパスに向かっていると、道端で腹の膨れた女性がうずくまっていた。「う、産まれる…」彼はあわてて、近くの公衆電話から救急車を呼んだ。彼は救急車が現場に到着するまでの間、妊婦の背中をさすり、激励した。彼女が救急車で運ばれていくのを見守りながら、彼の気持ちは晴れ晴れとしていた。しかし、ふと見た時計が彼を現実から引き戻した。試験開始二十分前だった。
彼は急いで試験会場に向かう。川内キャンパスに着いたのは試験開始五分前。良かった。間に合った。しかし、「ほっ」と息をついたのも束の間。さらなる不幸が彼を待ち受けていた。受験票を取り出そうとポケットに手を伸ばすと…ん?ない?今日ホテルを出るときにポケットに入れたはずの受験票がない。やばい。泣きながら、試験監督に事情を説明する。監督官はどこの地方のものともわからぬ方言でこう言った。
「最近、仙台でもスリが多いだべさかー。何でも、今じゃ、声をかけられて相手が油断しているうちに仲間がそっとポケットの中身を抜き取るみたいだべさかー。」
…あ。さっきの妊婦。まさか…?今さら気付いたところで後の祭である。彼は受付で受験票の再発行をすることになった。試験会場の席に着くことができたのは試験開始から十分経った後であった。彼は落ち着いて英語の問題に取り掛かろうとする。すると、どういうわけか彼の机が心なしか小刻みに揺れている。チラリと隣の席に目を移すと、脂ぎったデブがテンポ良く貧乏ゆすりをしていた。英語に集中しようとするたびに机が揺れ、彼の集中力を遮る。朝から不幸続きでイライラしていた彼はついに爆発した。「おい!デブやめろ!」彼は席を立ち怒鳴った。その彼の肩を試験監督が背後から掴んだ。「君、それはカンニング行為と見なしていいんだね」
彼は慌てて否定する。「ち、違います。カンニングなんかしていません」しかし、試験監督は「最初はみんなそう言うんだよね」と冷たく言い放つ。すると、突然教室に無数のマッチョ男が入ってきて彼を取り囲んだ。マッチョに揉みくちゃにされながら、朦朧とする意識のなかこう叫んだ。「畜生!妊婦もデブもマッチョも嫌いだ!」
トゥルルル。モーニングコールの音で彼は目が覚めた。「何だ、夢か…」安堵の息を漏らす。今日は待ちに待った東北大学の入学試験の当日だ。彼は身支度を整え、試験開始二時間前にホテルを出ることにした。丁度一週間前に降った大雪のせいで路面が凍結していた。恐る恐る足を踏み出す。ツル。ドテン。
問一 傍線部①のように彼が感じた理由として正しいもの
を次のなかから選びなさい。
ア、その妊婦を見た時、彼は全身に電撃が流れるのを感じた
イ、ひょっとして、恋…?
ウ、いやいや、相手は夫も子供もある人だ
エ、この気持ちは胸の奥にそっと閉まっておこう
問二 傍線部②はどこの方言か。次の中から選びなさい。
ア、 関西弁
イ、 仙台弁
ウ、 和田勉
エ、 受験の前日、母さんが僕に買ってくれた駅弁
問三 傍線部③の「後の祭」という慣用句を使って、例文を作りなさい。
問四 傍線部④について、この時の試験監督の心情として正しいものは次のうちどれか。
ア、 不正行為を憎み、過剰な正義感に燃えている
イ、 愛娘の朝帰りが最近多くイライラしている
ウ、 若さ故の過ちもあるだろうという寛大な気持ち
定年前にリストラにあい、再就職先も見つからず、途方に暮れている
