東北大学新聞:

国公立大学法人化 動き出した大学改革

自らの研究に没頭し、教育や社会貢献に関心を示さない大学教授。不透明な教授会中心の大学運営。こうしたことから、国立大学は日本の経済・社会の停滞の一因とされてきた。しかし、国立大学法人化や大学統廃合、21世紀COEプログラムの開始など大学を取り巻く環境は目まぐるしく変化している。現在進んでいる国立大学の構造改革によって東北大学はどこへ向かうのか。国立大学の現状を考える。
お祝い号4面・大学

○国公立大学にメス

二〇〇一年、大学関係者に衝撃的な調査結果がもたらされた。スイスのシンクタンク国際経営研究所が日本の大学教育の水準を主要五十カ国中最下位にランク付けしたのだ。

現在、大学教授は公務員として業績の有無に関わらず一生その身分が保障されている。そのため、研究や教育に関心を示さず安寧としている大学人は多い。それは東北大学とて例外ではない。実際、当紙が学部生対象に行ったアンケートでは64㌫の東北大生が「教官に研究や教育のやる気がない」とし、「学生に対する教育が行き届いている」とした学生は僅か23㌫に過ぎない。こうした現状が日本の教育レベルの低下を招いてきた。

日本の大学のこうした惨状を立て直そうというのが今回小泉内閣が進める国立大学構造改革の主眼だ。改革の柱は三つ。小渕内閣当時より検討されてきた国立大学法人化。経営の強化を図った国立大学の統廃合。トップレベルの大学に資金の重点配分を行う、いわゆる「トップ三十構想」である。

今年二月には、「国立大学法人法」関係六法案の閣議決定がされ、国会に提出された。今国会で成立すれば二〇〇四年度より全国八九の国立大学が一斉に「国立大学法人」として新たに生まれ変わることになる。今後、国立大学は①独立採算制による自由な運営②学長を頂点とした民間的なトップダウン型経営③学外者の学内運営への参加④教職員の非公務員化⑤大学の研究教育への第三者による評価の実施―などを行わなければならなくなる。

法人化により、文部科学省の管轄下から切り離された国立大学は経営面での国の保護が受けられなくなる。閉鎖的な大学組織に厳しい市場競争という刺激を与え、研究教育の活性化を促す狙いだ。

また、法人化による厳しい大学間の生存競争に備え、全国で国立大学同士の統廃合も進む。昨年十月、日本で初めてとなる二組の国立大学の統合が実現した。図書館情報大学と筑波大学、山梨大学と山梨医科大学である。キャンパスや在学生の学籍や教育課程は統合以前とは変わらないが、事務組織が一元化されるとともに研究部局間の連携が強化されることになる。

現在、統合を決定している国立大学は十二組。東北地方では弘前大学、秋田大学、岩手大学などが統合を協議しており、県境を越えた大学の統合として注目を浴びている。

また昨年、トップ三十構想を引き継いだ「21世紀COEプログラム」の第一回目の採択結果が発表された。本学では四分野五件の研究教育計画グループが選抜された。東京大学・京都大学の十一件、名古屋大学・大阪大学の七件に続き、採択件数では全国で五位となる。

採択された計画グループには今後五年間で年間一~五億円の資金が文部科学省より助成される。助成金は主に研究や博士課程の学生への奨学金に充てられる予定である。このCOEのメリットについて、本学関係者は「COEに選ばれれば、国際的に有名になり、より優秀な人材が本学に集まるようになる」と語る。

○改革により揺れる本学

こうした大学改革の流れは本学にとっても決して対岸の火事ではない。たとえ旧帝大の一角を占める東北大学といえど、魅力的な研究や教育の体制でなければ厳しい大学間競争のなか、学生が集まらなくなり経営難に陥ることも考えられる。阿部博之前学長、吉本高志学長の指揮下、本学の学内改革が進められている。

その一つが昨年度の全学教育科目(全学部一・二年生が履修する一般教養科目)カリキュラムの改編などに代表される全学的な教育改革である。

本学ではそれまで全学教育に責任を持つ教授会が無かった。教官も教育への関心が薄く、大学側も「全学教育の担当体制にやや緩みがあった」(『広報No.194』)と認める。こうした状況に対し、二〇〇一年大幅な全学教育体制の建て直しが行われた。新たに全学教育審議会を新設し、大学全体で全学教育を担当することになった。

こうして始まった新しい全学教育カリキュラム、最大の目玉が「基礎ゼミ」だ。基礎ゼミは学部を問わず新入生を希望ごとに二十人程の少人数クラスに振り分け、各クラスに課題を与えるものである。新入生に一つのテーマを通じ、大学での学問に取り組む姿勢や独創性を身に付けさせることが目的だ。

ある大学関係者は「少人数教育によって学生との接触機会を増やすことで、教官に教育に対する意識改革を促すのが最大の目的」と語る。さらに、各教官の教育実績などについて四段階評価し、その評価結果を教官の給与に反映させるシステムが現在検討されている。法人化後は公務員身分も無くなり、教官にとっては、教育者として無能と判断されれば現在の地位すら危ないという厳しいシステムとなる。しかし、逆に学生側から見れば、教官が教育熱心となり、その分より良い授業が受けられる可能性があるということになる。

これと並行して大学院教育の整備も進む。本学が現在力を入れている大学院教育が、「高度専門職業人教育」である。法曹、会計、経営管理などの分野で、専門的な能力を有する人材の育成を目的としたものだ。

現在までに経済学研究科で公認会計士養成コースなどのプロフェッショナルコースが設置されている。今後は法学研究科の法科大学院、行政大学院の新設や、経済学研究科の経営大学院が計画されている。こうした専門職大学院が実現すれば、学生はダブルスクールをすることもなく、高度な国家試験を合格することができるようになる。

こうした教育改革の他にも本学は今後のキャンパス環境改善を積極的に計画している。現在、百周年記念事業に向け、川内地区での新施設の整備、百周年記念会館の建設などが計画されている。また、本学では食堂を生協単独経営から数社の経営にすること、川内にコンビニエンスストア、北青葉山にショッピング・モールを誘致することなども現在検討されている。

今回の改革によって、大学教育の消費者である学生にとって大学環境が有利なものとなるというのが大方の大学関係者の見方だ。馬渡尚憲・前副学長も「学生を大切にするのが大学であるから、学生にとっていい環境を作っていきたい」と語る。

しかし、学生の中からは大学改革に危惧を抱く声も多い。今後経営に行き詰まり、その皺寄せが授業料の値上げという形で学生に悪影響を与えるだろうという指摘も多い。また、川内サークル協議会など一部学生組織では、法人化によって学生のサークル活動などが経営上の理由から切り捨てられる可能性があると主張している。二〇〇一年には学生自治会を中心に法人化に反対し、川内の講義棟をバリケードで封鎖し大規模なストライキを起こした。

大学改革は学生にとって改善か改悪か。大学教育の当事者として大学改革の行く末を注視する必要がありそうだ。

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