青葉山キャンパス移転計画 訴訟和解で実現に向け躍進
本学には現在市内に点在するキャンパスを青葉山に移転・統合させる計画がある。移転予定地の所有権訴訟のため進まなかった移転計画も、訴訟に解決の見通しがついたことで実現に向けての一歩を踏み出した。 お祝い号5面・大学
●本学のキャンパス移転計画
現在、本学は仙台市内に五つのキャンパスを所有している。全学教養と文系の学部の中心である川内キャンパス、理学部、工学部、薬学部の三学部が置かれた青葉山キャンパス、医学部・歯学部とそれらに附属した大学病院が立地する星陵キャンパス、農学部の雨宮キャンパス、そして大学本部と研究所を中心とした片平キャンパスである。
しかし、学部と研究所とが分散したキャンパスに分かれているのは不便である点、学際研究のために各学部同士が連携をとる必要性が出てきた点などから、一九九四年に本学のキャンパス移転・統合計画が立ち上げられた。
キャンパス移転計画の中で、移転が予定されているのは雨宮、片平の二つのキャンパスである。両キャンパスの移転予定地としては青葉山が決定されている。青葉山にはすでに理科系の三学部が位置しており、移転が完了すれば、ふもとの川内キャンパスと合わせ、青葉山一体を中心とした文系・理系が一体となる総合的な本学のキャンパスが完成する。
しかし、予定地の青葉山の所有権をめぐって訴訟が行なわれており、所有が確定されていない。それによって本学が青葉山を購入するめどがつかず、キャンパス移転計画は宙に浮いたままになっていた。なお、医学部・歯学部のある星陵キャンパスは大学病院に通う市民の利便を考え、移転しないことが決定している。
●青葉山訴訟
本学がキャンパス移転を予定している青葉山は、一九九七年より、その所有が宮城県と株式会社仙台カントリー倶楽部(以下、クラブ)によって争われてきた。
青葉山は現在、県から土地を有料で借りる形でクラブがゴルフ場を営業している。
県は本学のキャンパス移転の要請を踏まえて、クラブ側に立ち退きを要求したが、これにクラブが応じなかった。一九九七年県側は、青葉山は県の名義で国から払い下げられた県有地であるとしてクラブを被告とした訴訟を起こした。
それに対しクラブ側は、青葉山県有地を県が国から買い取る際に資金を提供したという経緯から、青葉山県有地の実質的所有権はクラブ側にあると主張。県の所有権は名義だけであるとして、クラブ側は県と真っ向から意見が対立したまま、訴訟は昨年までで五年を経過した。
これについて、本学はこれ以上青葉山訴訟が長期化することでキャンパス移転が遅れることを危惧し、昨年七月に訴訟の早期解決を求める嘆願書を裁判所に提出している。
また訴訟の長期化に対し、仙台地方裁判所は昨年十一月に両者に和解案を提示した。本学のキャンパス移転への影響の他、これ以上訴訟を続けても決着のめどが立たない点、両者にとっても負担が大きくなる点を考慮したためである。
和解案には、①青葉山県有地が県の所有であることを確認する、②土地の明け渡しを三年間猶予する、③県はカントリークラブに解決金として二十億円を支払う―などの点が内容として盛り込まれた。
昨年十二月には県側、クラブ側とも提示された和解案を受け入れる事で大筋合意した。県側は二月の県議会での承認を、クラブ側は三月下旬に行なわれる株主総会の承認をもって、四月上旬には正式に両者の和解が成立する見通しである。
和解が正式に成立する見通しがついたことで、青葉山県有地の購入のめどがつくことになる。これによって、長い間宙に浮いたままだった本学のキャンパス移転計画はいよいよ具体性を帯びてくる事になった。
●移転計画の今後
青葉山訴訟が長期化したことによって当初の移転計画からは様々な変更が生じた。
最も大きな変更は、片平キャンパスが全面移転から部分移転へと方針転換したことである。片平地区には現在、金属材料研究所、電気通信研究所、多元物質科学研究所が置かれているが、当初はこれら三つの研究所全てを移転させる予定であった。しかし、移転を予定しているため施設、設備の整備、改修に予算が下りない状態が続き、このままでは研究に支障をきたすと大学は判断、金属材料研究所、多元物質科学研究所を現在の片平に存続させる事を昨年の五月に決定した。
また、片平キャンパスに残る歴史的建築物も一部が保存される方針である。
なお、農学部雨宮キャンパスについては、従来の計画通り青葉山に全面移転する方針を保持している。
青葉山訴訟に解決のめどがつき、キャンパス移転予定地を確保できる見通しがついた事で、本学のキャンパス移転計画は大きく前進することとなった。
しかし、キャンパス移転の際の予算問題、移転後の跡地の利用など、キャンパス移転実現に向けての課題はまだ多く残されている。これらの課題を本学が市や県とどうやって解決していくか、それが今後のキャンパス移転計画の焦点になるだろう。
