一年生のみなさんいらっしゃい ブンブンブン新聞部
部活動を知りたいなら、その部室を見るのが一番だ。部室、ひいては部活のことを知りたいけれど、いきなり部室に見に行くのは気が引ける。そんなあなたのために新聞部の部室を紹介する。
お祝い号9面・大学
午後一時。昼休みも終わり、次の授業は四コマ。行く当てもなく、友達はみんな授業に出ている。ふらふらと部室に足が向く。
新聞部の部室は新サークル棟の三階南西角にある。階段を上った廊下には立て看板。『勇躍と超克の新聞部』『いいねえ』『寄ってく?』何の話だろう。
室内には絨毯が引いてある。そのため入る前に靴を脱がなければならない。他人の靴を踏み台にして銀色のノブを回す。いざ。
空気が澱んでいる。酸素が薄く、外に比べ年中温度と湿度が高い。中に入り、まずすべきことは窓を開け換気をすることだ。
部室奥中央のホワイトボードに目をやる。記事、担当者、取材の日程、今月の予定が雑然と書かれている。メモ書きなんだか落書きなんだか大体文字なんだか判別できないものも混じっている。
今日も取材があるようだ。記事の担当者と同行者が取材前の打ち合わせをしている。「取材の資料コピーして」「質問事項に追加ある?」という言葉が飛び交い、取材内容が詰められてゆく。下調べをじっくりして行けば取材先との会話も弾み取材もスムーズに進む。「もう時間だ」「カメラ持った?」慌ただしく扉が開き、嵐が過ぎ去る。部屋には誰もいなくなった。
座卓の脇に座り、しばらく経つとまどろみはじめた。背に並べられた本棚に寄りかかり午睡を貪る。新聞部の部室は日当たりがよく暖かい。
と、その時誰かが部室に入ってくる気配を感じた。誰だろう。誰でもいいか。目を閉じたまま気配だけ感じる。入って来た誰かは、座卓の前を通り過ぎ、部室奥にあるパソコンの前に座ったらしい。
「ピー・ビー・ガシャン」
眠りを妨げる機会の音。瞼を開けると、プリンタを使っている。レポートでも印刷しているのだろう、と夢に戻ろうとする。
できあがった記事が差し出される。印刷していたのは記事だったようだ。丁度、卓上には赤ボールペンが転がっている。ついでに何だかよくわからない紙が散乱し、ボックスティッシュや消し屑、空のジョージアコーヒーの缶、灰皿。それらを左腕で端によけ、記事のチェックをする。一般にこれを赤入れと言う。
記事を読む。読んでゆくうちに怪しい箇所に当たった。引っ掛かる。そのような時は河北新報の切抜きや重いバックナンバーのファイルを引っ張り出して調べる。
何とかかんとかアドバイスをし、記事を赤く染める。「はあ」と聞く相手に、半分夢の中のアドバイザー。赤入れでわからない助言をすると相手をさらに苦悩させることになる。
壁に掛けられたカレンダーを見た。一週間後はこの記事が載る号の編集だ。編集は二日間に渡って行われる。記事チェック、割りつけ、見出しつけなどをする。よく働くために編集に向けて体調を整えておこうと思う。
小腹が減ったのでお菓子を持ってきて封を開けた。食欲を満たしている隣で記事を直す男。キーボードの手は止まり、貧乏揺すり。先ほどから何度も煙草をくゆらせている。
五分進んでいる新聞部の時計を見ると、二時三十五分。時間だ。次の講義は出なければ。バッグを持ち、ゴミを捨てる。ついでにジョージアの空き缶も。「お疲れ様」と言ってドアを開く。「お疲れ様」という声が返ってくる。手は動いていない。彼の苦悩は深い。扉は閉まった。
新聞部の部室は年中無休で開いている。仕事のことは何も知らないで大丈夫。先輩が懇切丁寧に教えてくれる。興味のある方は新サークル棟320号室へどうぞ。
