東北大学新聞:

広瀬川にアザラシ現わる 本学理学部が保護

今年三月一日、広瀬川流域の澱橋のたもとでアザラシが発見され、市民の話題をさらっている。黒く光る獣が水辺にたたずんでいると下校途中の小学生から通報があった。体長一・五メートルほどのアザラシは早くもヒロちゃんと呼ばれだしている。現場は連日、ヒロちゃんを見に集まった住民たちで溢れかえっている。タマちゃんブームが下火になる中、杜の都仙台でアザラシ熱は再燃した。お祝い号10面・大学

仙台市立水族館の田中さんは「毛皮の模様から見て、このアザラシはゼニガタアザラシでしょう。黒っぽいのでまだ子供ですね。オスかメスかは詳しく見てみないと分かりません。とにかくそっとしておいて欲しいです」と話した。

アザラシは冬に北海道へ南下して繁殖と子育てを行う。そして春になったら北へ帰るが、この仔アザラシは間違えてさらに南下したものと見られる。広瀬川には水質上の問題はなく、餌となる甲殻類や小魚も生息している。また、アザラシは子育て期間が短く、ヒロちゃんはすでに独立している様子であり、特に生活上の心配はないという。

それより心配なのは人間たちの振る舞いだ。普通アザラシは夜行性で、昼は陸に上がって休憩し、夜になると海に潜って餌をとる。ところがヒロちゃんの場合は大勢の観衆を前にして緊張気味のためか、終日岩陰に隠れるなどして落ち着いた生活を送ることができないでいる。そしてその姿がまたかわいらしいと評判になってしまい、さらに観衆を増やす結果につながっている。

思わぬ珍客に仙台市も浮き足立っている。今更ながらにヒロちゃんを地元の振興に使おうと動き出している。これまで仙台市はワケルくんというキャラクターを使って「百万人のごみ減量大作戦」を成功させた実績がある。さらに「ウタちゃん」で一躍有名になった歌津町からアドバイザーとして職員を招き、磐石の体制を整えた。しかしアザラシの愛称について、住民側と対立が発生した。住民はアザラシを広瀬川にちなんで「ヒロちゃん」と呼び、この名前ですでに定着しつつあるが、市側は仙台にちなんで「センちゃん」と名づけようと計画していた。十日に行われた市議会では、仙台市として「センちゃん」に統一することが満場一致で採択された。しかし住民の猛反対を受けたため、翌十一日に市長が緊急声明を出し、愛称はヒロちゃんで決着した。

ヒロちゃん騒動にいち早く対応したのが市の観光協会。まずホームページにヒロちゃんコーナーを新設し、情報を流し始めている。十五日には「第一回ヒロちゃんコンテスト」を企画し、ヒロちゃんの写真やイラストを募集した。写真部門で、応募総数三百枚の中から市長賞に選ばれた青葉区の井上啓介君(9歳)は「とても嬉しいです。でも本当はアゴヒゲアザラシが良かったです」と率直に話してくれたが、一方で母親は「この子もヒロちゃんのように早くひとり立ちしてくれるといいんですけどねぇ」と恥ずかしげに語った。

アザラシ騒動は本学にも波及している。現場は川内キャンパスのすぐ近くであるため、休み時間に大勢の学生が川に詰めかけて騒ぎ、住民のひんしゅくを買っている。大学側は学生に騒がないことやゴミの持ち帰りを訴えているが、効果は上がっていない。

また一部の動物愛護サークルでは、ヒロちゃんに学生証を発行し大学で保護するべきとの声も上がっている。これを受けて大学側は二十日に緊急評議会(議長・多摩川教授)を開いた。評議会では、ヒロちゃんに「センダ・ヒロ」名義の学生証を発行することと、理学部で保護することが決定された。多摩川教授は「当初は農学部で保護するという声もあったが、最終的には広瀬川の水質に詳しい理学部に決定した」と語った。仙台を舞台にしたアザラシ騒動はしばらく収まりそうに無い。 東北大学新聞入学お祝い号十面は、エイプリルフール号となっております。掲載された記事はすべてフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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