田中耕一さん 記念講堂で公演
三月十九日、田中耕一さん特別講演会「A Monumental Blunder」が本学記念講堂で行われた。今回の講演会は電子情報通信学会および電気学会が主催したものである。田中耕一さんは本学工学部電気工学科OBで、昨年ノーベル化学賞を受賞。現在は島津製作所フェロー、本学客員教授などを勤めている。324号
主催した二学会が仙台市内で開催中ということもあり、講演会当日には多くの研究者や学会関係者などが会場につめかけた。千を越える記念講堂の席は一階から三階まで全て満席となり、立ち見の客も多く出た。
講演会の冒頭で紹介を受けて、田中さんが少し照れながら「今日は恩師の安達三郎教授の勧めで来ましたが、多少居心地が悪いです」と言うと聴衆の間から笑いがこぼれた。昨年ノーベル賞を受賞した「ソフトレーザ脱着法」(レーザ光線を使ったタンパク質の構造解析の方法)の原理や開発の経緯について講演を始めた。聴衆の大半が学会関係者ということで、講演はイオン質量の測定方法や有機化合物の分子化など専門的な話が中心となった。
講演の中で、田中さんは今回の発見について「化学者にとって、タンパク質など分子量一万を越える物質のイオン化は不可能というのが常識だった。しかし、自分は化学の専門ではなく、そんな常識にとらわれなかった。これが知らない者の強みだ」と力説した。
さらに、実験の途中で間違った薬品を使ってしまい、そのことが今回の発見につながったというエピソードを語った。田中さんはこれを「A Monumental Blunder」(記念碑的な失敗)と表現した。
講演の内容はさらに、田中さんが開発した商品が一台しか売れなかったことや、就職活動で失敗したことなどの裏話にも及んだ。講演は予定どおり五十分で終了。会場は拍手に包まれ、講演会は幕を閉じた。
