東北大学新聞:

超小型HDDを試作

学電気通信研究所の中村慶久教授らの研究グループが、垂直磁気記録方式を用いた直径1インチの超小型ハードディスクドライブ(以下、HDD)を試作したと発表した。
このハードディスク(以下、HD)は同サイズで世界最高記録となる、1インチ四方138ギガビットの記録密度を達成し、500円硬貨ほどの磁気ディスクに記録容量10ギガバイト(以下、GB)程度を書き込める。(344号)

これまでに垂直磁気記録方式を用いたディスクは開発されているが、超小型ドライブという製品の形での試作は今回が世界初となる。この事業は産学官連携で進められ、本学が主導、中心的な役割を担ってきた。 
垂直磁気記録方式とは、ディスクの記録方式の1つである。従来のHDは長手記録方式と呼ばれる方式であった。2つの方式の異なる点は、ディスク面に対する記録の方向が垂直か水平か。つまり、これは簡単に説明すると、棒型磁石を縦にして並べるか横にして並べるかである(図参照)。
垂直磁気記録方式の理論自体は1970年代後半に本学電気通信研究所が発明していた。しかし、研究・開発が本格化したのは1990年代後半に入ってからである。これは、技術が理論に追いついてきたことの他に、もう1つの理由がある。
現在、HDは大容量化の傾向にあるが、従来の水平方式ではその大容量化に限界が近づいている。
大容量化にはディスクの単位面積あたり、より多くの微小磁石を敷き詰める必要がある。しかし、水平方式では、微小磁石の高密度化を図ると磁石同士が強く反発してしまう。これを解決するために、これまでは磁気の弱い磁石を使うか、磁石を薄くして密度を高め、また、弱い磁気も読み取れる高性能ヘッドを開発してきたが、そうした方法では対応しきれなくなってきた。
そこで安定した高密度化が可能な垂直磁気記録方式に注目が集まった。今回の試作・開発は水平方式から垂直方式への移行に弾みをつけることになりそうだ。
小型化・大容量化が可能な垂直方式のHDDは、幅広い製品に利用できる。中村研究室では高精細画像を保存するサーバを試作している。手のひらに収まる大きさだが、10GBに約2.2時間の高精細映像を記録することができる。ほかにも、携帯電話やデジタルカメラへの搭載も可能である。実際に、垂直方式を採用したHDDを搭載した携帯音楽プレーヤーが6月20日に発売されている。
小型HDDの市場は日本がかなりのシェアを占めている。さらに市場を広げるためには、小型HDDの性能向上が必要となる。しかし、そのために必要な研究資金は十分とはいえない。中村教授は産学官連携の重要性とともに企業間の協力の必要性も指摘している。今回も、超小型HDDのナノスケールの加工を施したのは一般企業である。
今後の目標について中村教授は、「ディスクの更なる高密度化を目指す。理論では1インチ四方1テラビット(テラはギガの千倍)まで密度を高めることが可能。20年前には、1インチ四方1ギガビットは不可能だと考えられていたが、今回のHDDは1インチ四方138ギガビットの密度を持っている。地道な研究・開発が必要だ」と話していた。

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