バスすごろくで勝負
「すごろく」を知らない人はいないだろう。テレビやゲームなどの娯楽が数多くある現在では、すごろくに興じる機会というのはめっきり減ってしまったのではないだろうか。
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今回、その面白さを再認識するため、すごろくをやることにした。しかしただすごろくをやるだけではつまらない。プライドも許さない。そこで路線バスを使いすごろくを行うことにした。名づけて「バスすごろく」。そのまんまである。各バス停をすごろくのマスに見立て、自分たちがそのコマになるのだ。
部内の面々に「バスすごろく」を提案してみたところ、あっさり実行が決定。暇人が多いのだろうか?
もちろん基本はすごろくであるが、サイコロは8面体と6面体使用可などの様々な特別ルール(別表参照)を設定。ちなみにバス利用には一日乗車券を使用する。
かくして6月某日、ついに「バスすごろく」は実行された。コースは仙台駅~賀茂皇神社~仙台駅だ。この日の参加チームは、欠員により男2人でバスデートになってしまったチームブルー、偏差値の高そうなチームレッド、最も華やかでテンションの高いチームイエローの3つ。どの参加者も目が据わり闘志むき出しだ。(朝6時半集合で眠いということでは決してない)
朝7時、いよいよ「バスすごろく」がスタート。文字通り賽は投げられた。まずまずの滑り出しの各チームの中でまず最初に抜け出したのは、チームブルー。第1投に6を出し他2チームを頭ひとつリードする。その後5,4などびみょ~な数字を連発。「これではマズい……」と感じた2人は、最も小さいが最もオイシい目の1が出ることを祈りながらサイコロを振る。しかし出た数は4と、これまたコメントのしようがない。青春真っ只中のはずの、20歳前の男2人、虚しくなる。
そうこうしている間にチームレッドがあっさりブルーを抜き去る。レッドはいち早く折り返し地点の「賀茂皇神社」にたどりつき、ルールで決められているお参りを済ませる。願い事はもちろん「バスすごろく」勝利だ。
エキサイティングなイベントの無さに途方にくれ、純粋にゲームの勝利を目指すことにしたチームブルー。「大きい数出ろ」と祈りながら歩道上でサイコロを振る。願いどおり8が出て、「よっしゃー!!」と叫んだ瞬間、歩いてきたおじさんにサイコロを蹴飛ばされ2が出現。まさかの展開に呆然とするも、突然のイベント発生に喜ぶ。神はブルーを見放してはいなかった。この直後から、一日乗車券を紛失し無駄な金をはたかなければならなくなったり、運転手さんの御厚意でバス代がタダになったりと、多くの事件に見舞われるのだ。
ところでチームイエローは、序盤から他2チームに大きく引き離されているのに、なぜか「海が見たくなった」と言い残し海へ向かう。結局海へ行くのに2時間もかかった上に、途中でカレーを食べてしまったので、イエローの勝利は折り返し前に厳しくなる。
事実上優勝争いはレッドとブルーの2チームに絞られる。賀茂皇神社を折り返し、着々とゴールに近づくチームレッド。幸運にも大きな数を出し続けレッドを猛追するブルー。バス内で鉢合わせても、お互いに目も合わせないほどの闘魂を見せる。この2チームをここまでさせるものの正体は一体何なのであろうか。
仙台駅手前までは比較的順調であった両チームであったが、ぴったりの数が出ずなかなか「あがる」ことができない。仙台駅~電力ビル前間の往復の連続である。振る↓落胆↓乗るをどれくらい繰り返した頃だろうか、ついにブルーのサイコロが1を示す……。午前11時のことであった。
ブルーのあがりの約20分後、レッドがあがり、大きく遅れてその3時間後イエローも無事にあがる。
その後のポイント計算で、ブルーのメンバーがトイレを探すためにバス停間を歩き減点、ゴールまでにサイコロを振った回数が最も少なかったレッド、海へ行ったイエローにそれぞれ加点され、1位レッド、2位ブルー、3位イエローという結果となった。しかし順位などどうでもよかった。参加者の顔は、「あがる」瞬間の達成感、そして「すごろく」の面白さを再認識できた喜びに溢れていた。「この快感を参加できなかった部員にも伝えなければ……」皆の思いは一緒だった。
翌日、参加できなかった部員たちに「すごろく」の面白さをマシンガンのように語る。皆、迷惑そうな顔もせず、目を輝かせて聞いてくれた。そして苦労をねぎらってくれた。「ほんとにやってよかった」参加者全員がそう思った。
後日、部の会計担当に「バスすごろく」に使用した一日乗車券の領収書を渡す。彼女はそれを一目して当然のように言う。「こんなに使ったの?この額じゃ経費で落とせないね。自腹ね。」参加者の顔はあっという間に真っ青になった……。
