検証:国立大学法人化
さて、これまで法人化によって国立大学というシステムがどう変わったか、ということを見てきた。しかし、学生にとってはその変化はあまり目に見えないものであるだろう。そこで今回は、法人化の影響を受けている事業や、規則などを見ていきたい。(345号)
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①三条新学制寄宿舎建設
これまで学内の施設整備は、設計、建設、管理運営、維持のすべてに関して、大学が主導となって実施してきた。しかし大学法人化に伴い、すべての国立大学が公共法人という位置づけになったことで、大学ごとにFPI事業を利用して施設整備を行うようになったのだ。
PFIとは、民間の資金や施設運営などのノウハウを、公共施設の整備や運営に活かしていくという公共事業の一つの手法のことである。国側では、これまで大学が行なってきた事業に民間のノウハウを導入することで、建設や維持にかかる資金を削減し、なおかつよりよいサービスを提供することができる、としている。
ただし、国立大学法人の場合、建設などに架かる経費は、国からの運営資金交付金や施設整備費補助金が主な財源となる。施設整備費補助金は、文部科学省によって選定された事業について交付されることとなっているため、事前に文部科学省の事業選定を受ける形となる。
本学においては、平成18年度中の完成を目指す、三条新学制寄宿舎(以下、新寮)の建設がそのPFI事業の一つとしてあげられる。設計、建設、管理運営、維持などについては、大学側の選考によって決定した、民間の事業者の計画に基づいて行っていく。大学側は発注者として事業者と協議しながら、施設運営や整備を進めていくこととなる。
しかし、民間に事業を委託することで、利益優先の事業にならないか、といったことが問題として挙げられている。
②青葉山キャンパス移転
本学では平成6年から、雨宮キャンパスと片平キャンパスの一部を青葉山に移転し、川内・青葉山地区にキャンパスを統合しようという計画が進められている。
各学部間の相互協力や、産学官連携の拠点として川内・青葉山地区を、整備していくこととしている。また、仙台地下鉄東西線の駅が、川内および青葉山キャンパスに建設予定とされていることもあり、これまでよりも通勤や通学に便利になると見込まれている。
青葉山の県有地を借り、ゴルフ場を経営していた仙台カントリークラブとの交渉の難航や、仙台の景観保護を訴える市民団体の反対などがあり、計画がしばらく停滞していた。
しかし、今年1月に移転先として予定している青葉山県有地の購入にもめどがつき、平成19年度には工事に着手したいとしていた。そんな中で今年8月、本学はキャンパス移転に関わる費用を、基本的に自己資金でまかなうことを決定した。
これは、国に提出した概算要求が2年連続で認められなかったことが要因であると考えられる。そして、その背景には、やはり国立大学の法人化がある。
これまで、移転事業は国費事業として行われていた。しかし、国立大学法人化によって各大学には自立した予算運営が求められ、この移転事業に関しても基本的に国からの予算は下りないこととなったのである。現段階では、移転の決まっている雨宮キャンパスや片平キャンパスの跡地の売却や借入金で経費をまかなうことを予定している。
県有地の購入問題や経費財源の問題などで、当初の計画よりも実際の完成が遅れることが懸念されている。
③その他
法人化をきっかけに、学内でも社会貢献や、企業との研究協力を広く進めていこうという動きが広がっている。本学付属図書館の一般開放や、本年度より研究推進・知的財産部で産学官連携のシステムなどを大きく変更している。
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ここまでを見ても、法人化を受けてさまざまな事業が始まったり、変更することになったりと、大きく影響を受けていることが見て取れる。
中でも法人化の大きな影響としては、財源面のことが挙げられるだろう。例えば、PFI新寮建設の施設整備費補助金などは、文部省の選定を通った事業にしか交付されない。その一方で、キャンパスの移転費用としては、国側からの補助金は出ないのである。
独立行政法人となったとはいえ、現段階では国からの交付金を主な財源としている以上は、その使途について慎重にならざるを得ないのかもしれない。しかし、これではまだ国の組織から完全に独立したとは言えないだろう。今後大学の主な財源が交付金から各大学独自のものに変っていったときに、どうなるのか気になるところだ。
図書館の一般開放などは多くの一般市民の利用者を得、成功しているといえるだろう。その一方で、PFI新寮建設のようにこれまで大学として実施したことのない事業に関しては、結果が未知数のものもある。
多くの学生にとって、法人化の影響というのは今年度からの授業料値上げ程度だろう。しかし、今後はキャンパス移転のように学生にとって重大な問題となりうる事業が実施されることも考えられる。大学が変わり始めているということを、もっと気に留めていかなければいけないのではないだろうか。
