東北大学新聞:

ぜん動運動可能な人工食道の開発に成功

ぜん動運動が可能な人工食道を、本学加齢医学研究所の山家智之教授らのグループが開発した。これにより、食道がん患者が食べ物を詰まらせずに飲み込むことが可能になった。

今回開発された人工食道は、摩擦の少ないポリビニールアルコール(PVA)の管に、熱を加えると縮まる形状記憶合金の輪を一定間隔に取り付けるというもの。
その輪を温めるため小型化された磁気コイルを胃の中に設置する。磁気コイルは、本学工学部の開発した、ナノマテリアルの薄いシールドが張られているため、身体への影響なく使用できる。
そのコイルに外部からエネルギーを供給し、輪を順に収縮、弛緩させることにより、ぜん動運動を起こし、食べ物を詰まらせずに進めることに成功した。
今までの食道がんの手術は、胃または小腸を食道に接合させる。もしくは、患部にステントと呼ばれる網目状の金属製筒を挿入するなどの措置を取っていた。しかしこの方法は、大規模な切開手術を必要とする上、筒部分に食べ物が詰まるなどの不都合が生じていた。
内視鏡で患部に取り付ける比較的楽な手術ですむため、大規模な手術を要せず、体力の低いお年寄りでも手術が可能になった。
また、この人工食道は、食道を広げるためのステントにも電磁気で温まる素材を使用している。そのため、患部を直接温めることができ、近年注目されているがん治療の温熱(ハイパーサーミア)療法にも応用が可能。
温熱療法は42.5度の熱をがん細胞に与え、がん細胞の動きを弱めることによるがんの進行抑制、さらに体温上昇による免疫力活性化を促す。しかし、食道は身体の表面から離れているため温熱療法は難しかった。
管の太さ、長さは用途に応じて作り変えられる。そのため、胆道がんや尿道がんといった管腔系臓器がんへの応用も可能。また、取り外しが容易なため、がんに限らず、食道炎など飲み込むのが苦痛となる病気にも援用し、緩和したら外すという治療法にも展開できる。
山家教授は「食道がんは発見のときに手遅れのことが多い。この人工食道で、患者さんが少しでも長生きでき、食事を楽しめることが可能になることが嬉しい。海外ベンチャー企業との提携も計画中で、できるだけ早期の実用化を目指したい」と話している。

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