ES細胞から神経細胞創出・マウスで確認
マウス胚性幹(ES)細胞から、ほぼ全ての神経系細胞の創出が可能であることを、本学先進医工学研究機構(TUBERO)の加藤英政助教授らのチームがイギリスとの国際共同研究で実証した。(351号)
細胞はその生物が発生する過程で絶えず周りの環境と連絡を取り合い組織の中の空間的配置や役割を決定している。まだどの組織に分化するか決まっていない細胞、つまり幹細胞に、濃度・タイミングを考慮し分化を誘導する物質を与えることで、ある特定の細胞に誘導できることが知られている。
今回同チームは、このことを利用してES細胞に様々な物質を様々な濃度で実際に与え、生体内において神経系が構築されるプロセスを培養皿内で再現し、様々な神経系細胞を誘導する試みを行った。その結果、ほぼ全ての神経系細胞が比較的安全に作り出せることを実証した。
これまでもES細胞を用いて様々な細胞を分化させる研究は行われてきた。しかし、奇形腫が出来てしまう可能性が排除できず、実用化に即したものは少なかった。今回の研究では、奇形腫形成の可能性を飛躍的に減らすことにも成功したという。
神経細胞は血液細胞や肝細胞などの分裂能の高い細胞と異なり、そのほとんどが分裂を行わない。一度欠損すると元に戻ることができないものが多く、神経系の病気に対して根本的な治療を行うには外から直接欠損した細胞を補わなければならない。
マウスES細胞からの神経系細胞の創出がヒトES細胞にまで応用されれば、アルツハイマー病や脳性麻痺など神経難病の治療や、発症メカニズムの解明につながる可能性がある。
加藤助教授は今回の実証について「医学的にも非常に意義が深く、ES細胞を始めとした幹細胞研究の重要性を示した」と話した。
*TUBERO
医工学が世界の科学技術開発の主流になりつつある中で東北大には医・工連携した確立した組織がなかったため、大学の独立法人化に伴う組織改革戦略の具体的構想として提案され発足した組織。
