東北大学新聞:

半導体性能の壁破る

東北大学未来科学技術共同開発センターの大見研究室が、株式会社日本セラテックと共同で、超緻密で耐腐食性に優れるセラミックス膜「UCコート」を開発した。

 現在半導体産業においては、同研究室が株式会社東京エレクトロンと共同開発した高密度プラズマラジカル反応新半導体製造装置が広く用いられ始めている。この装置は、内部にプラズマを作り出し、クリプトンと酸素を反応させて、酸素ラジカルを発生させる。これをシリコンウェーハと反応させることで、半導体製品を生産する。
この装置では、ガスの種類や基盤電極などの条件を変えるだけで、連続して多用な製品を生産できる。またこれにより従来の生産方法と比較して、圧倒的に品質の高い半導体を得ることが出来るようになった。
 製造過程で用いられるガスおよびプラズマには腐食性がある。装置が劣化し、製造される半導体の品質が低下するのを防ぐためには、装置の各部材が十分な耐腐食性をもつ必要がある。従来は、結合力が強い酸化物であるイットリウムオキサイド(Y2O3)セラミックスが材料として用いられてきた。しかし熱伝導度が小さく局所的な加熱や、急な温度差により簡単に破壊されることから用途は限定されていた。
 そのため、部分的にY2O3を有機溶剤に溶かしコーティングし、加熱して製膜する技術が開発された。これによりセラミックや高温耐熱性金属の耐腐食性を向上させることに成功した。しかし、膜自体の精度も低く、表面のナノ粒子間に微細な穴が空くなどの欠陥が生じることもあった。
 今回開発された「UCコート」は、そういった従来の問題を解決する。イットリウムを含む有機微分子を所定の暑さに塗布した後、酸素と反応させてY2O3膜を形成する技術である。
原料から製造工程までを徹底して制御することにより、膜のナノメートルサイズでの欠陥がほぼゼロとなった。表面が非常に平滑であるため、従来のように表面の凹凸をなくすための加工を施す必要もない。また、従来と比べ非常に薄く、高い透光性を持つが、高い耐腐食性を有している。空気中の汚れが少ない環境を用意する必要はあるが製膜に特別な装置を必要としないため大型製品への対応が容易。複雑な形状の製品にも対応できる、高い形状適応性を有している。
 「UCコート」の導入で、半導体製造装置の性能、耐久性が向上する。これにより、現在の半導体集積回路性能の行き詰まりが解消され、さらに高性能な半導体集積回路の開発が可能となる。また、平板デジタルディスプレイ産業や太陽電池産業でも、優れた製造装置が誕生するため製品の大型化、低価格化、超高品質化への貢献が期待される。
 大見忠弘教授は、「自動車や飛行機が百年以上も前に発明されて以来今尚進化を続けているのと同様、私達の半導体関連の研究にも終わりはない。東北大学でこのように、世界を引っ張っていく研究が行われていることを多くの学生に知ってもらいたい」と語った。

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