音で歯周病を診断
歯ぐきの上から超音波を当て、歯を支える骨までの距離を測定することで、歯周病の進行度を音に反映する聴診器タイプの診断装置を、本学大学院歯学研究科歯内歯周治療学分野(島内英俊教授)の石幡浩志助手らが開発した。
歯周病は歯を支える骨が破壊されていく疾患で、種々の全身疾患や低体重児出産などのリスクに関係する。
確定診断には通常エックス線検査を要するが、被ばくの問題で頻繁に行うことが難しく、特に妊婦の場合はためらわれるケースが多い。本学大学院歯学研究科口腔生物学講座歯内歯周治療学分野ではこのような現状をふまえ、医科領域に広く普及している超音波エコーによる診断法を利用することを念頭に研究を行ってきた。
超音波エコーは産婦人科領域で胎児の造影にも用いられるように、被ばくの可能性のない安全な診断法だが、歯科においてこれを用いようとしても従来の画像計測用プローブ(探触子)はサイズが大きすぎて、口の中での計測は困難であった。石幡助手らのグループは、歯周病が生じた歯ぐきに腫れが生じ、さらにその歯ぐきの内部では歯槽骨が吸収され、見かけ上の歯肉の厚さが増大することに着目。金属材料の欠陥検査に使われる高精度の超音波計測法を用いて、歯ぐきの表面から歯槽骨までの距離、すなわち歯肉の厚さを計ることで歯周病の進行度を知ることができるのではと考えた。
今回用いられた超音波プローブは、従来の医療用計測と比較して3~4倍の周波数である20メガヘルツの音波を送受信する直径約6ミリの単素子プローブと呼ばれるもので、従来のような画像計測はできないが、小型化により口腔内の計測が可能。プローブを歯肉に当てて音波を送り込むと、音波成分は歯肉内部を伝わり、その一部が歯槽骨の表面にて反射しプローブにもどりエコーとして観測される。音波が返るまでの時間(潜時)を計測することで、歯ぐきの表面から歯槽骨の表面までの距離を推定する。またこのシステムは、病状が音色で分かるようにも工夫されている。
エックス線検査で歯周病と診断された患者12人に超音波を当てたところ、肉眼では見えない歯槽骨の欠けている部位など、全員について歯周病を反映する潜時が長くなったことを確認することができた。石幡助手は「この装置を使うには、ある程度の習熟が必要だが、実用化に向けた課題は少ない。すべての歯周病患者に、毎日でも使える安全な検査法として、さらなる精度の改善や使用感の改良を施したい」と話している。
