東北大学新聞:

植物園でかくれんぼ

今年も新勧の季節がやってきた。新聞部へのファイアボール・ニューカマー達を恒例のネタ企画で大いに迎えようではないか。ネタ記事は新聞部に入部したからには避けて通れないもの。とくと味わうがよい。

 今年はかくれんぼで新入生を洗礼する。大学の建物だとトイレぐらいしか隠れられるところがない。ふと遠くを見てみると青々とした青葉山がある。植物園でかくれんぼしたらさぞかし面白そうだ。今は春で、木々の生命エネルギーが満ちている。この季節に山でアクティブに動けばきっといい気分だろう。かくれんぼは久しくやっていない。懐かしすぎてなんだか甘酸っぱい気持ちになってくるぞ。
 決行の日は快晴だった。植物園にはカクレンジャー達が集結してくる。一年生も5人来てくれてありがとうございます。キミたちには期待しているよ。全身ベージュで統一して来た人、高校の時の青ジャージで来た編集長など、個々人の意気込みが伺える。まずい、私は登山靴しか装備がない。
 かくれんぼのルールはこうだ。鬼は3人。10分待った後、一定のエリア内でカクレンジャーを発見する。制限時間は30分。発見したら鬼はその無様なカクレンジャーの名をメーリスで流す。見つかった人はスタート地点に戻って待機。最後まで隠れおおせた人には賞賛が与えられる。賞品が出ないのが残念。
 さあ一回戦だ。10分で隠れ場所を見つけねば。適当に山道を登っていくと休憩所があった。裏に隠れるとすると快適性は良さそうだがあっさりと見つかってしまいそうだ。諦めてまた山道を登る。いかん、10分経ってしまった。すぐ脇のやぶに隠れてみよう。しばらくすると鬼がやってきた。やぶの隙間から鬼が左右を見渡しているのが見える。こちらに気付かないように頭を潜めた。自分の隠れたところから動いてしまっては見つかってしまう。当初に選んだ隠れ場所を信じるのみ。鬼がきょろきょろしている姿がおかしい。ま、まずい。笑い声が出そうだ。そう、かくれんぼの楽しみはこの感覚だ!ノーベル賞ものの再発見だ!
 ケータイには鬼からの発見、捕獲のメールが舞い込んでくる。見つかってしまってしょげて戻る金澤と益城が見えたので姿を現した。開口一番「見えてたよ」と言われた。まさか見破られるとは。この時金澤が一計を案じた。すなわち私を人知れずスタート地点まで移動させ、鬼に「えー、いつからいたの?」と言わせる作戦だ。私の前後に偵察がつきそろそろと移動する。ところがあと一歩のところで見つかってしまった。思わず頭を隠して、いないふりをする私。時間切れまであと少しだったのに悔しい。とりあえず一回戦のウィナーは私だった。
 カクレンジャー達の戦跡を聞いてみた。一番目に見つかった編集長の敗因は青ジャージを着ていたことだった。木立から青色がよーく見えたらしい。一年生の今野君がでっかい水溜りを越えてさらに崖を上ったところに居たという。鬼は水溜りについた足跡から見つけたようだ。鬼も今野君もなんという忍者。プチ変装をして一般人を装っていた奈良君など一年生のエキセントリックな活躍が目立った。丸太で寝ていて見つかった、隠れているのに写真を撮られた、足音がしてひやひやしたなど様々な感想があった。
 続けて二回戦だ。鬼を4人に増やして難易度を上げる。私は沼の方に歩いた。ふと見ると立ち入り禁止のような柵があった。この先に隠れればきっと欺けるだろう。柵の先が高台になっていたのでそこに伏せた。おお、下の様子が手に取るように分かる。狙撃手になった気分だ。しかしなぜかカラスの羽が大量に落ちていて気持ち悪い。ずっとここにいたら鳥インフルエンザになりそうだ。そうこうするうちに鬼のベッカムがやってきた。このままやり過ごしてもよかったがそれではネタにならない。隠れたまま大声で呼んでみた。立ち止まって探し始めるベッカム。ふふ、君の一挙一動がよく見えるよ。さらに面白くするために電話をかけた。「君のことが見える見える」それでも見つけてくれないので追い討ちをかける「僕は初めから一歩も動いていない」視線が合ったような気がする。ベッカムが上ってきた。「あれー、ここに鈴木の黒い影があったんだけど」なんとも見当違いのところから声が聞こえてきた。5分程でようやく見つけてくれた。このとき回ったメーリスがこうだ。「鈴木発見!隠れてるとこから声をかけるなんてバカなやつめ!」いやいや、君は試合に勝って勝負に負けたのだよ。
 スタート地点に戻ると見つかっていないはずの金澤が談笑していた。先ほどの作戦の雪辱のため、彼は初めは近くに隠れていて、少し経ったら戻ってきたという。しかし時間になる前に鬼が戻ってきたらおしまいである。結局金澤は終了後に見つかった。大健闘と言える。
 終了後しばらく経っても戻ってこない人がいた。嫌な予感が皆の脳裏をかすめ全員で山狩りをおこなった。かくれんぼで遭難なんてシャレにならない。かくれんぼはかくも恐ろしい遊びだったっけ?おーいでてこい。
 結論から言うと無事に見つかった。そのキング・オブ・カクレンジャーには「くのいち」の称号が与えられた。しかし今度は一年生が消えた。ミイラとりがミイラになったとはこのことだ。新勧企画で一年生が失踪するとは幸先がよくない。
 その後、その一年生の姿を見た者はいなかった。

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