東北大学新聞:

舛岡富士雄名誉教授 紫綬褒章記念インタビュー

4月28日、春の褒章受賞者が発表され、本学名誉教授の舛岡富士雄氏が紫綬褒章を受章した。1984年、東芝在職中に「フラッシュメモリー」を開発したことが認められた形となった。
紫綬褒章は芸術、学問、スポーツなどで功績があった人物に贈られる。
本紙は紫綬褒章受賞記念として舛岡氏にインタビューを行った。

――受賞の知らせを受けてどう感じましたか。
非常にうれしかったですね。各新聞にも大きく取り上げられましたし。
海外では、イギリスの雑誌『Nature』にも取り上げられたり、フランスで出た科学の歴史の教科書に、掲載されたりしています。科学の歴史上の人物として認められています。
それが、日本でもやっと認められた。そういう感慨ですね。
――工学に興味を持った理由は。
 工学という学問が、筋道を立てて考える、非常に論理的な学問だと思っていたからです。
でも、あるルールがあってそれをどのように適用するか、その筋道をきちんと解釈できるかということ、は理科系でも文科系でも、結局のところ同じなんですよね。社会に出て、そう感じるようになりました。
――なぜ東北大を選んだんですか。
ひとつには、東北大は工学部の実績が非常に高かったことです。
 あと、僕は非常に片寄っていて、数学や理科はできたけど、英語や国語は全然できなかった。当時の東北大の入試問題は、数学と理科の配点が文系科目の倍くらいあった。それが、僕にとっては入りやすかったんです。
――今、AO入試が始まっていますが。
特徴のある人をとること自体には賛成。でも、それをどうやって判断するかは難しいと思う。
僕はむしろ、大学に入ったら基本的に卒業できるというシステムにも問題があると考えています。アメリカでは進級するのに必要な単位が取れないと、ランクの低い大学に移って基礎から勉強し直すか、退学するしかない。一部の大学では、順位をつけて後ろから何パーセントかの人を退学させていますね。
――シビアな世界ですね
むしろ僕はそれが当たり前だと思う。とても合理的になっています。
単位をとるための基礎が身についていなかったのだから、次の段階の授業は受けられない。電気系なら電磁気学の単位を取れなければ退学、とかね。電気をやるためだけの素養が身につけられなかったんですから。
――どのような学生時代を送りましたか。
我々の時代は、みんなひとつの工学部として試験を受けて、入学した。2年から3年へ向かう時、学科を選ぶわけ。そこで、最終的に希望が通るかどうかは成績が問題になってくる。
つまり、人気のある学科に入るには成績が問題になる。昔、電気・電子工学科は工学部の中で一番難しかったから、1、2年生の頃は自分の希望する学科に行くための熾烈な戦いだったわけです。さらにいえば2年生までに単位を落としたら、3年生に確実に上がれなかったんです。
――学生時代に何をすればいいと思いますか
僕もわかりません。でも、僕はどういう風に勉強や研究をしたらいいか、という方法を学ぼうとしていました。そしてその時重要となってくるのは、どの教授についていくか、どの研究室に入るかということでしょうね。
それで僕の場合は西澤研究室に入ったんです。僕がそれを学び取っていくために、西澤研究室が助けになってくれると考えたんです。
――西澤教授から受けた影響は。
当然、大きな影響を受けたわけですよ。学部3年の後期から博士課程までの6年半、研究の仕方というものを習うことができました。
就職も同じです。東芝に仕事ができる研究者がいる、という理由で東芝を選びました。
自分がどうなりたいか、どのように自分を訓練していくかを考えて師を選ぶことが大切です。東北大から東芝へ、足掛け10年以上世界のトップクラスの師の下で仕事ができた。その中で仕事のやり方を学び、盗みました。こういう発明ができたのも、西澤先生がいたからなんです。
仮に学部で希望の師につけなかったとしても、諦めなければチャンスはたくさんある。大学院に進む時と博士課程に進む時、研究室をもう一度選べるんです。さらにいえば、就職の時も選べるし、就職してからも転職できるでしょう。
自分の考え方を訓練する若い時期に、自分の仕事のやり方を自分で探し、選択していくことが重要だと思います。
――フラッシュメモリーを開発した時に苦労した点は。
構想ができたとして、さて実際作ってみせようと思った時に、設備や、研究費や手伝ってくれる人を集めることが必要になってくる。そこが一番苦労した所です。
日本は、海外からモノや技術を取り入れるのには力を入れますが、国内で生まれた新しいものに対しての理解や評価がまだ十分でないと思います。
それでも、僕はこれからも日本で研究をしていくつもりです。外国に呼ばれても、研究は日本で。研究成果を日本に還元したいと思うんです。
――現在の教授の状況は?
会社を興して、研究活動を続けています。
今度開発しているのは、サラウンディング・ゲート・トランジスタ(SGT)。今の計算機の性能を、ある意味1000倍くらいにする可能性があります。それで世界を制覇してやろうかな、と思っています。夢は大きく。結果的にフラッシュメモリーだって世紀の発明として世界中に影響を与えているんですから。10年後にはすべての半導体メモリがSGTに換えられるくらいをね、狙っていこうと。
――研究者として必要な素質は何だと思いますか。
 やはり、筋道を立てて考える、ということだと思います。どういう仕組みなのか、これからどうなっていくのかが分かるから、先が見える。
話は変わるけど、計算機はアイコンを押すと答えが出てきてしまうでしょう。あれ、途中が完全にブラックボックスになっちゃってる。レポートを書く時だって、インターネット上の記事のカット&ペーストでできてしまうから、自分で考えない。みんなそうなってしまうと、筋道を立てて考える機会がどんどん少なくなっていく。今の若い人がかわいそうだと思うね。
――それでは、筋道を立てて考えるためには?
原因があって結果がある、その間の部分がどうなっているのか、なぜそうなるかを考えていくしかないと思います。
 3歳くらいまでの子供は、「○○って何?」と必ず聞きますよね。当たり前に思っているものにも、疑問を持たないといけない地道にそういう訓練をして、筋道を立てた考え方ができるようになるんです。
――理系の学生だと、仕組みを調べるためによくラジオを分解したりしますね
私もラジオを分解したり作ったりしましたよ。様々なものに、なぜそうなるのか、と考えていました。
ところが、今のラジオやテレビは、小さなICチップで作られてしまう。それだと仕組みがわからないよね。
――今の東北大生にメッセージをお願いします。
 やはり、筋道の通った考えをつける習慣を身につけてほしい。学部も研究対象も関係なく、ね。そして、そのための教育体制を整えるのが大学側の急務だと思います。
そして、学生生活を楽しんでほしい。光陰矢のごとしといいますが、後で考えると本当に、あっという間に終わってしまっている。今の時間を大切にしてください。

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