東北大学新聞:

サイエンスカフェ 経済と環境の両立目指す

 東北大学で主催し、二十二回目を数えるサイエンスカフェに先日参加した。会場となるメディアテークには三十分前に私が到着した時点で既に人がおり、開始時には元々用意された席ではイスが足りず急遽追加されるほどの盛況ぶりだった。今回のテーマは「経済と環境の両立する社会をつくる」東北大学大学院の農学部教授である両角和夫氏が、氏の得意とする農業経済学についてわかり易く解説してくれていた。

 午後六時に始まった会は、まず司会による両角氏の簡単な紹介があり、続いて氏の進めるプロジェクトである、「いわて発循環型流域経済圏の構築に関する研究」の紹介となった。両角氏は話の中で岩手の三地域(四市町村)を例にとり、プロジェクトの具体的な構想について説明してくれた。その一つに葛巻町と住田町におけるメタンストックシステムの開発がある。これは家畜の排泄物を畜産排せつ物メタン発酵設備によりメタンガスにする技術で、これにより現在大量に余っている家畜の排泄物を有効活用することができる。他にも胆沢町における米からのエタノールの生産・利用システム、陸前高田市生出地区ホロタイの郷での木炭自動車の研究など、現在無駄になっている資源を有効活用するというコンセプトの元最新技術の応用例の数々を紹介してくださった。
 このように、循環型流域経済圏の構築とは農業、農村における資源を自然エネルギーに効率よく変換するシステムをそれらの地域に整備し、自立した経済圏を構築することを目指している。これはエネルギーの有効活用、農村地域の活性化という利点に留まらず、地球温暖化の歯止めとしても大きな役割を果たすと氏は語る。例えば、農業からはバイオマス(生物資源)を利用したバイオ燃料やバイオガス、農村からは太陽光、風力、水力、熱、温度差などを利用した電力などが供給できる。これらの賦存量から見れば、かなりの程度、石油に代替することが可能であるというのだ。これが実現すれば、現在日本が抱える大きな問題が三つも解消できることになる。しかし、現実問題としては課題も多く、講演についで行われたグループ討論、質疑応答ではその実現に際しての課題に焦点が置かれ、活発な討論が繰り広げられていた。その中では主に資金面と技術面の問題が多く挙げられた。資金面の問題に対して両角氏は農協をスポンサーとすることで解消できると述べた。しかし、技術面に関しては当然ながら地道に開発を進めるしかなく、それも何年で実用化できるなどの具体的めどはたっていないようだった。
 このように現段階では課題も多く、実行すれば即結果に結びつくような計画ではないが、会の最後で氏は「ともかく実践してみることが大事。そのために多くの方に理解して頂き広く協力を求めることが大切」と述べ会を締めくくった。サイエンスカフェには老若男女様々な人が集まっている。中には帰り道にメディアテークが賑わっているのを見て参加したという高校生もいた。ともかく気軽に、自由に参加できるのがサイエンスカフェのウリで、実際何の予備知識も無い文系の私でも十分理解でき、話の面白さを理解することができた。次回第二十三回は「都市における緑の役割~定禅寺通りの街路樹の効果~」というテーマで六月二十九日(金)に行われる。このテーマに日ごろから興味がある人も無い人も、講演者の新鮮で斬新な話題に耳を傾け、活気ある討論に加わる醍醐味をぜひ一度味わってみて欲しい。


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