牛の放牧開始
本学農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センターにおいて5月8日、牛の放牧が行なわれた。牛を麓から山の放牧地まで移動させる。牛は11月上旬まで牧草地で過ごし、身体を太らせる。この夏山冬里方式の放牧は毎年行われている。
いよいよ出発の時になると牛たちは盛大に鳴き始めた。黒毛和種74頭、日本短角種55頭の計129頭が放牧された。特に日本短角種をこれだけの規模で飼っているのは珍しい。まずは麓の研究施設の畜舎から牛を誘導し道路を歩かせる。さながら牛のマラソン大会のようなもので、牛たちは群れになって歩いて行く。経験のない子牛は戸惑いながらも歩いていた。コースから外れて文字通り道草を食う牛がいたが施設職員に枝でぶたれて戻っていった。しばらくすると険しい山道にさしかかるが牛たちは人間の小走りほどのスピードで登っていく。放牧地に着くと牛たちは思い思いに散らばって草を食んでいた。
この放牧では、目的は牛を肥やす事の他にいくつかある。選択採食や放牧地の植生の変化、牛の基礎的な行動、牛の体調の変化等を研究する。選択採食の分野では、牛が様々な牧草の中からどの種類の牧草をよく食べるかという行動を調べる。さらに牛に食べられることで植物がどう生え変わるかも研究する。フィールドセンターの牧草地の地形は尾根や丘陵、林などが入り組んでいて複雑である。その複雑な地形で牛がどのような行動をとるか、地形によって生える植物も変わるので牛がそれらとどう関わっていくかなど、牛が介在する事による自然の変遷を研究する。
免疫の面からも牛を研究する。放牧は牛舎と違い適度な運動ができ、個体間の接触も少なく、それが牛にとって快適さを生み出す。その結果ストレスが減り、それが牛の免疫機能にどのような影響を及ぼすのかを調査する。このような研究は長年行なわれてきており、このフィールドセンターで新種の病原体を発見したという功績がある。
フィールドセンターの牛は研究用だが、食肉として出荷される可能性がある。日本の食肉市場は脂たっぷりの黒毛和牛が主流となっているが、赤毛に分類される日本短角種を本学発のヘルシーな牛肉として広めていきたいと、センター長の中井裕氏は語った。
