東北大学新聞:

特集 突撃!となりの研究室

 今月号から始まった「突撃ッ!!となりの研究室」では、各回1つ、研究室を訪ね、研究内容などを取り上げる。第1回目は、電気通信研究所の枝松・小坂研究室へお邪魔した。

 枝松・小坂研究室は2003年に発足した比較的新しい研究室で、量子光情報工学を研究している。物理学の分野の一つに、量子力学というものがある。光や電子などの、波の性質と粒子の性質をあわせ持つ「量子」をミクロな視点で見たときに現れる不思議な性質についての理論だ。そしてその量子力学を応用して新しいコンピュータや暗号通信を実現するために必要な技術やデバイスの研究・開発をしている。
 従来のコンピュータは、電子が一定の値よりも小さいか大きいかによって、0か1どちらかの値を取っていた。量子コンピュータでは量子の重ね合わせという性質を利用して、0と1の状態を重ね合わせた量子ビットによって計算を行う。すると、量子の値が0の場合と1の場合の全てのパターンを一度に計算することができる。それにより従来のコンピュータでは時間がかかりすぎて実質計算不能な処理が一瞬でできる可能性がある。しかし量子の重ねあわせ状態を長い間保つ事は難しいなど、問題点がたくさんあるため、実用化はまだまだ遠いとのこと。同研究室ではコンピュータを作るのに適した材料である半導体を使って量子計算用のデバイスを作ることも行っている。「量子もつれ」と呼ばれる状態にある光子を半導体から作り出すことに世界で初めて成功している。
 量子暗号通信は、量子が複製不能なことや、一度観測すると量子のもつれが壊れるなどの、量子の性質をうまく利用することによる暗号通信だ。それは従来の暗号通信のように現在見つかっている方法では解読は困難といったものではなく、解読が不可能なことが理論的に証明されている。さらに盗聴を試みると、それが証拠として残るといった性質ももつ非常に強力な暗号通信だ。今のところ通信速度が遅く、通信距離が100キロメートル程度までに限定されるなど、解決すべき課題はまだまだある。それでも既に大手企業が商品化して売り込みの状態にあるなど実用化に非常に近いところまできている。同研究室では通信距離に関する問題を克服するために必要になる「量子中継器」を実現する方法も研究しており、ようやく成果が出つつある段階に来ているようだ。
 実験室にはたくさんの精密な光学機器や絶対零度に近い極低温を発生させる装置などを組み合わせた実験装置が置かれていた。その実験装置では、量子の中継に関する実験をしているとのこと。

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