東北大学新聞:

井上プランに見る東北大の今

今年100周年を迎えた東北大学。今、どのような問題に突き当たっているのか。また、これからどのように変わっていくのか。
 日々のニュースを取り扱っている東北大学新聞ならではの視点で、本学総長の提示した井上プランをまとめ、いま、東北大に起こっている事を探りたい。

●井上プランとは?
今年3月発表された、井上総長が任期中に取り組もうとしている重点課題をまとめたもの。教育、研究、社会貢献、キャンパス環境、組織・経営という5つの大きなテーマにわかれている。今回は教育についてとりあげる。

●井上プラン「教育」
教育システムの再構築と、教養・専門知識・国際的視野を持った人材の育成を理念とする。教養教育、大学院教育、教育システム、学生支援体制、入試制度の5点について今後の課題を提示する。
 
・異分野融合への試み
井上プランには大学院教育改革の一環として、「異分野融合型新研究分野開発を担う高度な研究人材の育成」があげられている。
今、従来の縦割り的、閉鎖的な学問のあり方が見直されている。社会の複合的な問題に対応していくため、各大学には異分野融合や自己目的の明確化が求められている。
これを背景に、2002年から21世紀COEプログラムが始まった。世界トップレベルの大学の育成をめざし、優れた研究教育プロジェクトに対して5年間の援助をするもの。本学では13件が採択されている。
そのCOE支援も2007年から順に期限を迎えてくる。そこでポストCOE戦略が重要となる。
21世紀COEの成果を継承していく制度としてグローバルCOEプログラムが、2007年から始まる。本学は5件が採択されている。
本学では2006年、独自の国際高等研究教育機構を新設した。COEに採択されたプロジェクトを中心に融合分野における研究を促進し、大学院生や若手研究者を支援する取り組みも行う。

・ 入試制度改革
文学部では2009年度入学試験から後期日程が廃止されることになった。以降、後期日程を継続していくのは経済学部と理学部のみとなった。
これに変わって広く導入されてきたのはAO入試である。一般入試より3、4ヶ月早く合格が決まるAO入試や推薦入試の合格者に対して、井上プランでは先行して大学教育を始めることをめざす。これによって一般入試入学者との差異化をはかる方針だ。

・国際関係の強化
井上総長はプランの中で、「世界リーディングユニバーシティ」を何度も強調している。そのために海外との学術交流が欠かせない。
2007年4月、本学はタイのチュラロンコン大学と学術協定を結ぶことを合意した。大学間の学術協定は25カ国、120あまりの機関を数える。
今後、主要国には代表事務所を設置し、情報発信や留学支援の拠点にしていく。既に2006年10月にアメリカ、2007年4月に中国に設置した。今後もヨーロッパやアジアの各国に置かれる予定。
また井上プランでは英語教育を重視し、一部の授業を英語のみで行うことまで言及している。そして培った英語力を世界で生かすチャンスとして海外インターンシップ制度や交換留学制度の充実をめざす。

・就職支援
日本では博士課程終了後、研究員として大学に残るポスドク(ポストドクター)の数が多い。研究員を助教や講師として受け入れる大学の数にも限りがある。そのため、学生(特に院生)の就職先確保が急務となっており、井上プランでもふれられている。
第一に、国内外のインターンシップの支援があげられている。
ポスドクの高度な専門性を生かすために、学内に受け入れ口を作る試みもある。国際高等研究教育機構の中の、国際高等融合領域研究所では、ポスドクを中心とした研究活動を展開していく。

・学生支援
 課外活動施設の整備、大学全体としての一体感を醸成するなど、キーナート文書の影響があるとみられる。キーナート文書は、本学の特任教授のキーナート氏が本学へのアドバイスをまとめた文書で、2006年3月に公開された。
また、同窓会組織の強化、卒業生の寄付による基金の設立などもキーナート氏の提言によると思われる。

●問題点
・資金面
海外インターンシップ、キーナート文書の反映などのプランには莫大な資金が必要となる。この資金源として想定されているのが、「東北大学基金」である。主に100周年記念事業募金を資金源とする。
100周年記念事業は100周年記念事業の推進を目的として、50億円が目標額とされている。しかし、具体的にどのようなことに資金を使っていくかはっきりせず、集められる目処はついているのかという疑問が残る。
もう一つの資金源として、前述のキーナート文書にもある同窓会からの寄付金がある。本学は同窓会組織強化のため、卒業生と在学生の交流をはかるホームカミングデーを企画している。
・海外インターンシップ
 井上プランの中で海外インターンシップが強調されているが、その内容ははっきりしない。国内の他大学では、海外インターンシップといっても主に留学支援を指すものであるが、井上プランでは就業体験の支援のようだ。
成功すれば、国内に類を見ない画期的な制度になるかもしれないが、どの程度の規模なのか、資金はどのくらいかかるのか、不明な点も多い。

●まとめ
 これまでテーマ「教育」の中身を見てきたが、いままさに動きだしているものから、実現はまだ先となるだろうものまで、様々だった。しかし、現在の東北大が抱える問題を確実に把握し、解決していこうという気概が溢れている。
 教育は10年の計。早晩の効果は得られないだろうが、目的を明確にひとつずつ実現していけば、必ず達成できるだろう。

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