新たな通信方式の開発に成功
本学電気通信研究所の中沢教授らの研究グループは光通信の周波数利用効率を従来の10倍に引き上げる新たな通信方式の研究開発に成功した。この研究はアドバンテスト研究所(仙台市)との産学連携により5年をかけて周波数安定化レーザーが開発され、その後、2年をかけて実験が行われ完成に至った。中沢教授は2006年に長距離に光通信で送った情報を増幅させる装置の開発でノーベル化学賞受賞候補にも選ばれたこともある。
光は電磁波の一種であり、振動する。その振動数は200THz、携帯電話などに用いられるマイクロ波の約1万倍である。振動数が大きくなればそれだけ多くの情報を送れるため、光通信は高速大容量などと呼ばれる。しかし、無線通信と光通信とではその技術レベルに大きな開きがある。マイクロ波では周波数が安定なため、電磁波の振幅と位相をいくつにも分けて2次元的に把握し、それにより一つの信号で複数の情報を乗せることができるQAM伝送と呼ばれる通信技術を利用できた。このように振幅と位相の分け方の多さから周波数の利用効率を上げる技術を多値伝送技術という。しかし、光通信においては光の振動数が非常に大きいため、振動数が不安定となりその方法が利用できなかった。
そこで、分子自体の回転と振動が非常に安定なC2H2(アセチレン)を利用し伝送用のレーザー(光源として用いる)を安定化させマイクロ波のように扱えるようにした。この技術の確立により光通信の技術が無線技術にかなり近づいたと言えることになる。
通信における周波数帯域は限られており、その中で帯域を効率的に利用するためにはどれだけ多くの情報を送れるかが重要となる。今回開発された通信方式により狭い帯域内に大容量の情報を送ることができるようになった。
これらのことを中沢教授は新幹線を情報、光ファイバーを線路に例えて、今までは10本の線路の上を新幹線に走らせていたのに対し、この技術の確立で1本の線路に10階建ての新幹線を走らせることができるようになったということであると説明した。
開発された超高密度通信方式は従来と同じ帯域内でもより速く多くの情報を伝送できるため、遠隔医療やハイビジョンテレビ、三次元テレビなどでの活躍が見込まれ、また同じ情報を各家庭に送る際の消費電力を抑えることが可能となる。
