DV訴訟第二審 石幡国際文化研究科長へインタビュー
石幡直樹国際文化研究科長(平成19年4月就任)に当研究科に所属する米国人H教授の訴訟に対する研究科の対応を3月26日に伺った。
本学大学院国際文化研究科の米国人H教授がドメスティック・バイオレンス(DV)を理由に京都市在住の女性(以下、Aさん)から損害賠償を求められた民事訴訟は、教授の暴行を認めた一審の判決に対し、双方が不服申し立てをして仙台高裁で目下係争中である。Aさんが教職員や学生へ郵送した手紙により名誉を傷つけられたという教授の反訴も一審では認められなかった。第一回弁論が3月13日に開かれ、4月24日の最終弁論ののち判決が下る。
―第一審係争中、H教授が「小説の挿絵に使う」といって目的を偽り、本学の元留学生女性をAさん役にしてDVがあったとされた当時の「再現写真」を撮影し、元留学生に無断で裁判所に提出しました。H教授はこれを認めていますが、何か処分を下さないのですか。係争中であることが処分を保留する理由になりますか?
一般的にいってH教授の行為は不適切だ。元留学生が困惑し傷ついていることは把握しているが、彼女からの訴えや告発は現在のところ届いていない。元留学生からあれば、研究科として対応を考える。裁判資料を作成するときの協力の求め方に問題があったと理解している。懲戒に値するかは、訴えがあった場合に設置される全学の懲戒委員会が判断する。係争中に起こったことで、研究科は行動を起こす立場にない。
―「H教授は留学生を含む複数の女子学生に性行為を強要したり、研究費を不正に使用したりした。妊娠し重婚させられている女性もいる」とAさんは裁判資料や手紙で訴えています。研究科はこの疑惑を調査しないのですか。手紙には被害者の実名や旧所属先、卒業年度が記載されています。
特定の被害者が挙がっていても、本当か分からない。例えば過去の記録から都合の良い学生を探したら、話を作り上げることもできる。学外の第三者の一方的な情報なので、信憑性には一層の注意が必要だ。仮にAさんが指す人が実在するとしても、調査するか慎重に決めるべきだ。セクハラなどにあたるかは、その言動を受けた人の感じ方によって違う。被害者の意思を尊重しなければ調査することで被害者を傷つけてしまうかもしれない。だから被害者や関係者からの訴えなしに調査はできない。調査が必要となったら、一研究科ではなく全学でする。なお研究費の不正使用は確認されていない。
―東京財団がH教授への助成金の内定を取り消しました。
内定の取消は本人から聞いたけれども、財団からは知らされていない。財団でしかるべき判断をしたのだろう。研究科の教員が助成金の内定を取り消されたことは遺憾に思う。助成金応募のときに推薦した研究科の教員も同じ思いだろう。ただし、その推薦書はH教授の裁判が知られる前に書かれた。
―H教授は訴訟中UCLAで「研修」していました。東京財団の助成金が差し止められたのに、なぜ行くことができたのですか?
H教授は在外研修の一環として講義をするためにUCLAへ行った。H教授がUCLAと交渉し、客員教授として滞在する許可をもらっていた。ところが財団から内定は出ていたものの、助成金がなかなか交付されなかった。H教授の講義はUCLAの授業予定にすでに組み込まれていて、期限が迫ってきたため、「出張」を自費「研修」へ切りかえる措置をとった。H教授はまず昨年9月から12月、続いて今年1月から3月までの2回に分けて「研修」で渡米した。
―「H教授の研修期間が迫ってきた平成19年9月14日、科長がH教授の所属する講座の教員を集めて会議を開いた。そのとき教員たちに科長が文書に記名捺印を求めた」とH教授が裁判資料に書いています。
長く研究科を離れるため、H教授が担当するはずの授業や院生の研究指導を講座の中で相談しなくてはならなかった。H教授は在外研修を前に、訴訟の影響や申請書類の一部不備があり反対する教員もいたけれども、それは研修を中止する理由に基本的にならない。研究科や講座での禍根を残さないように会議を開き、講座全員の同意を求めた。内容を文書で残し、念のため押印も求めた。その文書は講座の同意を得たという覚書であり、正式の文書ではないから見せられない。
―H教授のUCLAへの研修に合意する文書の他に、「マスメディアに広大に流れた記事などによって、もし学生が私との接触に不安を訴えた時、他の講座のメンバーがその学生を受け入れる」ことへの同意を確認する文書もあったと裁判資料にあります。この時も反対する教員がいたそうですが。
そのような文書については何も知らない。
―文書に反対し記名捺印しなかった教員がいましたが。
同意するが押印はしないという教員はいたけれども、講座の同意は得られたと私は捉えている。
―「4つの調査委員会が設けられ、審議を経てすべての容疑から赦免された」とH教授が裁判資料に書いています。
懲戒委員会ならば、それは一部局でなく大学が全学として設置するものだ。懲戒委員会の情報開示は調査対象となった人のプライバシーに関わるので、「設置した、しなかった」の情報開示にも基準がある。研究科に設けられた調査委員会についても、H教授が個人として言っていることだ。研究科としても全学の場合と同じ。情報開示の基準によって大学がそのプライバシーを守ろうとしている教員が、何らかの委員会の調査を受けたと裁判資料で自ら述べている。この状況で苦慮しているが情報公開の基準をむやみにないがしろにはできない。大学へ開示請求をしてもらうしかない。
―今後の研究科の対応は?
判決が下り、裁判が確定してから検討する。
