特集 井上プランに見る東北大の今
昨年100周年を迎えた本学。100年目の始まりとともに発表された井上プランは、世界に誇る大学を目標としている。井上プランはその目標を目指すに当たって教育、研究、社会貢献、キャンパス環境、組織・経営という5つの柱を表明している。毎回そのひとつにスポットを当てている本特集であるが、今回は「地域貢献」に焦点を当てた。本学は「世界と地域に開かれた大学」として人的、知的リソースを広く社会に還元し、その発展に貢献することを井上プランの一つの目標として掲げている。そのためには前号までに取り上げた世界トップレベルの研究結果の創出、教育の充実が社会に対し有効に活用されることが重要となる。世界と地域への貢献の指標として、井上プランは世界最高水準の大学としての基本的貢献、地域社会との連携強化、産学官の連携強化、研究・教育成果の積極的発信という4項目を挙げている。これらを読み解くなかで、東北大学の「今」とこれからに迫った。
◆世界レベルの人材育成
多分野において人類の生存、生活に貢献できる世界レベルの人材を地域から輩出することが本学最大の社会貢献である。その実現のために、井上プランは様々な教育戦略の実施を計画している。教養教育の改善、大学院教育の深化、医療に応用できる科学技術の開発を目指す医工学研究科の新設等である。
◆地域社会との相互的な連携強化
本学は東北最大級の知的、人的資源を所有しており、本学による社会的貢献への地域住民の期待の度合いも大きい。その期待に応えるべく、本学はこれまでに様々な活動を行ってきている。例えば、本学の研究成果を広く市民に発信する場としてサイエンスカフェがある。サイエンスカフェは、2005年から月1回のペースで仙台メディアテークにて行われており、従来の研究会や講演会とは異なる特徴を持っている。これまでのような研究者による一方的な情報発信の場としてではなく、市民が積極的に参加するなかで活発な議論を繰り広げ、双方の交流を深める良い機会として市民に定評がある。また研究者にとっても、最新技術に対する市民の反応を見る中でこれからの研究に還元でき、市民のよりリアルなニーズを知ることができる。
◆実学尊重理念に基づく産学官の連携強化
実学尊重の伝統を持つ本学ならではの、企業との応用を視野に入れた共同研究を本学は重視してきた。例えば、大学における基礎的、応用的な研究から企業などにおける実用的な研究へのプロセスをスムーズに実現させるべく、産学官連携推進本部が設置されている。産学官連携推進本部とは、「研究中心大学」、「実学重視」を理念とする本学の研究成果が、スムーズに企業の開発戦略に結び付けられるべく設置されたものである。この傾向をさらに強固なものとするために、井上プランではサイエンスパークを新たに設置し、ベンチャー企業の育成と共同研究の推進に力を注ぐことが述べられている。サイエンスパークは、研究者・研究機関が集まり、「知」と「機能」を融合させる「場」として期待されている。また、本学発のベンチャー企業としては、日本トリムとの産学共同により昨年11月に設立されたトリムメディカルインスティテュートや、近日設立予定の本学大学院工学研究科応用化学専攻の浅井教授による非破壊検査装置と、TOF‐PET装置ガンマ線検出装置を販売するものなどがある。
◆研究・教育成果の積極的発信
本学には世界トップレベルの研究分野が多数あり、その成果を多くの一般市民に分かりやすい形で発信することは本学の責任であり、社会貢献となる。また、世界リーディングユニバーシティ実現のためには、その情報を国内にとどめずに世界に向けて発信し、東北大学の国際的評価を更に高めていく必要がある。そのために井上プランが掲げるのは、学術交流協定校との連携の強化、国際学術研究集会の開催促進の検討、国際的メディアによる広報活動の企画推進などである。その他にも、研究者を対象として、研究、教育の成果を集積した東北大学機関リポジトリ(TOUR)の整備・充実を図っている。
