ガンマ線検出装置を開発
本学大学院工学研究科応用化学専攻の浅井圭介教授らの研究チームは陽電子から発生するガンマ線を用いた非破壊検査装置及び、陽電子放射断層撮影(PET)装置を発展させたTOF‐PET装置に用いられるガンマ線検出装置を開発した。
この研究は東京大学とも共同研究をしており、本学では、高性能なシンチレータ(ガンマ線検出装置)を開発し、それを用いて信号処理をする装置を東京大学が開発している。また、それらの装置の開発・販売をするために浅井教授を社長とした大学発のベンチャー企業を立ち上げる予定。
陽電子には、電子と衝突すると電子とともに消滅してしまう対消滅と呼ばれる性質がある。このとき、ガンマ線が2本放出され、その角度はほぼ180度となる。対消滅により放出されたガンマ線を2ヶ所で検出すると、検出した2つのシンチレータの間に対消滅が起こった箇所があるということがわかる。従来では、2つのシンチレータの間という情報しか得られなかった。ところが浅井教授らが開発した高性能シンチレータは300ピコ秒という非常に高精度な時間分解能を持っているため、2つのシンチレータにガンマ線が到着するまでの時間差を計算することにより、どこで対消滅が起こったのかを知ることができる。
電子が多いところでは陽電子はすぐに消滅するが、それに比べて電子が少ないところでは陽電子が電子と衝突する確率は低くなり、消滅するまでの平均時間は長くなる。つまり、陽電子を発生させてから対消滅によって発生するガンマ線をシンチレータが検出するまでの時間を計測し、陽電子の発生から対消滅までの時間はどれくらいか、また対消滅した位置はどこかの統計をとることによって物質の電子密度がわかることになる。それにより、超音波の非破壊検査では知ることができなかった原子レベルでの欠陥を発見することができる。このような装置は、品質が大きく左右される金属、半導体、化学製品を取り扱っているメーカーなどに需要があると浅井教授らは考えている。
陽電子放射断層撮影(PET)装置は、ガンの早期発見に威力を発揮する、陽電子の対消滅によるガンマ線を利用した装置であるが、撮影するときに放射線を被ばくすることになる。そこで、TOF‐PET(Time Of Flight PET)装置では前述の高性能シンチレータにガンマ線が到着するまでの時間差を計算する技術を用いることで、少しのガンマ線から多くの情報が得られるようになり、撮影時の放射線被ばく量を減少させることができると期待されている。
陽電子の対消滅による非破壊検査装置はTOF‐PET装置と比べて、すぐに開発・販売を行うことができるが、TOF‐PET装置は顧客と相談しながら開発を進めていく必要があるため、時間がかかる。新しく立ち上げるベンチャー企業では、早く開発・販売ができる非破壊検査装置と、時間のかかるTOF‐PET装置の2つの特徴をもった商品を展開していく。
