超高解像度の光学顕微鏡を開発
本学多元物質科学研究所の山本正樹、柳原美広両教授のグループは超高解像度の光学顕微鏡を開発した。
これは可視光線よりもはるかに波長の短い軟エックス線を利用したもので400ナノメートルの対象を観察でき、現時点で世界最高性能を誇る。理論上では30ナノメートルまで観察可能であるという。
研究グループは2~30人で、それぞれの研究室で顕微鏡に必要な装置を開発した。光学顕微鏡は二つの研究室の研究成果が形となったものである。
開発にあたってメーカーで用意できない精密な部品は多元物質科学研究所付属の機械工場やガラス器械工場にて製造した。今回開発された光学顕微鏡の正式名称はTXM3という。
微細な物体を観察しようとする場合、可視光線を光源として用いる光学顕微鏡では最大200ナノメートルまでが観察可能な範囲である。光学顕微鏡は対象を直接目で見て観察することができ、光源を用意することが簡単であるなどの利点がある。電子顕微鏡の場合、可視光線の代わりに電子を対象に当てて拡大することで、光学顕微鏡よりもより微細な対象を観察することができる。しかし、電子顕微鏡では対象が湿っている場合には使用できないため対象を乾燥させる必要がある。
湿った対象を観察しようとする場合、光学顕微鏡の他にクロマトグラフィーやDNAクローニングなどの生化学的な手法を用いるが、これは数ナノメートル以下の対象しか観察できない。そのため、これまでは観察対象が湿っているものには光学顕微鏡でも電子顕微鏡でも他の生化学的な手法でも観察できない領域が存在したが、今回の顕微鏡の開発により実際に見て観察できる領域が広がった。近い将来には細胞を生きたまま観察することもできるようになるという。
光学顕微鏡は光源から観察対象に可視光線を当て、その光をレンズに通して拡大することで観察を行うものである。今回開発されたものも原理は同じで光源として可視光線の代わりに軟エックス線を使用している。可視光線ではない軟エックス線を光源として用いるために専用の装置も開発された。LPP光源といい軟エックス線を照射することができる。
全ての光はあらゆる物体に対して反射・吸収・透過を起こし、光の波長と物体によってその割合が変化する。軟エックス線は波長が短いため通常のレンズではほとんど吸収されてしまい極わずかしか反射を起こさない。そこで、軟エックス線を反射させるために、鏡にシリコンとモリブデンを交互に塗った反射多層膜をレンズとして用いる。シリコンとモリブデンはそれぞれに反射率が違うため、交互に塗ることでその境界面で反射してきた軟エックス線を回折によって強めることができる。レンズとして用いられるものには計160層の多層膜を使い、実験ではレンズに入射した軟エックス線をおよそ6~7割の光強度で反射することに成功しており、顕微鏡にはこの多層膜を4つ使用している。しかし、厚さは2層で7ナノメートルしかなく、回折によって反射光を強めるためにはそれぞれの層の厚さを0.07ナノメートル以下で調節する必要がある。研究グループはそれを可能とする装置も同時に開発した。
今回開発された光学顕微鏡は医療やバイオテクノロジーなどの各分野に威力を発揮する。軟エックス線を照射する精度が上がれば半導体などの機械にも応用が可能となり、さらなる活躍が見込まれる。
