東北大学新聞:

特別寄稿 デートDVについて

ドメスティック・バイオレンス(DV)は直訳すれば、家庭内暴力となります。
しかし、日本では、子から親への暴力が、“家庭内暴力”として定着していたの
で、夫婦間・恋人間の暴力を、そのままDVと表現しました。DVは婚姻関係に
ないカップルの間で振るわれる暴力も含み、これだけを特に「デートDV」と呼
んでいます。熟年・老年期の方からデートDVの相談もありますが、主に若いカ
ップルに起きている問題です。
DVは殴る・蹴るといった①身体的暴力ばかりでなく、②精神的暴力、③経済的
暴力、④性的暴力(詳しくは、左図のデートDVチェック表をご覧ください)の
4つに分けられます。①身体的暴力は、アザや傷ができ痛みもあるので暴力と自
覚しやすいものの、あとの3つは心が傷ついても外傷はありません。そのため、
本人だけでなく周囲の人も気付きにくくなります。
「携帯電話をチェックし、異性のアドレスを消させる」(②)は、若い男女間で
はよくある事です。「そんな事も暴力か。お互い様だからいいじゃないか」と言
う人もいます。しかし、「それを受け入れないと怖い」、「異性のアドレスが見
つかると何をされるか分からない」と恐怖心を抱くほどならば、どうでしょうか
。答えは、当事者が怖いと思うのだからこれもDVです。
大学生時代から7年間、ある男性と交際していた女性の場合、電話口で「俺はも
うダメだ」と大声で叫ばれ、暴れる音を聞き、その様子が見えないので余計に「
自殺される恐怖」にとらわれました。彼女が暴力を振るう彼について学校のカウ
ンセラーへ相談したら、「二人でよく話し合って仲良く」と帰されたそうです。
多くの経費(旅行の経費など、交際費は女性持ち)を背負い続け、鬱病になって
、仕事をクビになり、自殺行為に追い込まれたのは彼女の方でした。しかし、友
人から情報を得て「この状態はDVかもしれない」と考えるようになりました。
「別れるなんて許さない。そんな事になったら自殺する」(②)という言葉は、
一見愛情表現に聞こえるかもしれません。しかし、若い女性がチェック項目で一
番たくさん反応してきたのはこれでした。「遺書に自分の名前を書いて自殺した
らどうしよう」などと思うのです。これは脅迫です。
暴力があった後は、彼はひたすら謝り優しくなるので、「あれは間違って起きて
しまったこと。よほど辛い事があったのね」と思いたくなります。しかし、DV
の特徴は「暴力のサイクル」といって繰り返すことにあります(別図)。二人の
絆が強まるほど暴力は激化し、サイクルの回転速度は速くなる傾向があります。
別れてしまえば安心と思う方がいるでしょうが、別れ際、別れた後こそ暴力が激
化し一番危険なのです。彼は押しかけて無理やり彼女の部屋に入り(住居侵入)
、体をつかんで壁に押し付け(暴行)、物を壊し(器物損壊)、無理やり性交し
ました(強姦)。これらはすべて不法行為です。しかし、恋人関係なので「警察
には相談できない」と彼女は考えていたのです。その後、彼女はDVについて学
習し、警察生活安全課に相談することを決めました。ストーカー規制法により彼
に対し警告を出してもらい、まとわりつきは終わりました。
この女性のように学習すれば、「自分には何の責任もない」と分かり、恋人に「
自殺するぞ」と言われたら「どうぞ」と返せるようにもなります。
恋人間のDVは離婚と違って裁判に持込むケースは少ないのですが、経済的事情
が絡むなど別れる事が困難になっている時は、弁護士を代理人に立てて交渉する
のも一つの方法です(内縁関係の清算)。また、既婚者との性関係は、妻(夫)
から訴えられ、慰謝料を請求されることもあります。被告に数百万円の支払いを
命じる判決もあるので、既婚者との恋は痛手を覚悟してください。また私が代表
を務めるハーティ仙台は、月から金曜日、午後1時30分から4時30分に電話相談
(022-225-8801)を受付けています。デートDVやセクハラなどの性
暴力被害者の支援が活動目的です。ためらわず、あきらめず相談して欲しいと思
います。
大学は、DV、セクシュアル・ハラスメントの教育を学生へもっと積極的に行う
必要があると思います。教師と学生の恋愛関係は成人同士であっても、成績評価
や指導上、権力関係があるためセクハラです。相談・裁判支援を行っていると「
一番性教育が必要なのは教師ではないか」と思える日々です。性関係には、マナ
ーとルールを尊重すべきです。(八幡悦子)

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