奈良美術館の絵画にマニ教の教祖
奈良市の私立美術館「大和文華館」所蔵の絵画にマニ教の開祖であるマニが描か
れていることが、本学文学研究科の泉武夫教授の論文に基づき、京都大学の吉田
豊教授の調べによって確認された。
泉教授は2006年、山梨県大和村(現甲州市)の寺院に所蔵される虚空菩薩の
絵画について調査した際、描かれている人物の特徴が、中国の浮き彫りに描かれ
たマニの特徴と一致することを確認。さらに大和文華館所蔵の絵画についても、
服装などの特徴からマニが描かれている可能性を指摘した。
これまでの説では、この絵画は天上界・人間界・地獄など仏教の世界観を表現し
た六道図であり、絵画に描かれているのは宋から元の時代の中国の絵画によく見
られる釈迦・孔子・老子の3人であると思われていた。しかし今回の研究により
、背景には仏教の世界観である六道ではなく、マニ教の世界観である三道が描か
れていることが確認され、中央に描かれた人物はマニである可能性が強まった。
マニ教は善悪二元論を特徴とする宗教で、中国における唐から元の時代にはユー
ラシア大陸全体に広く普及したが、明の時代にはほぼ消滅した。現在マニ教に関
する美術品はほとんど残されておらず、今回の発見は今後のマニ教研究において
大変貴重なものであるといえる。
今回の発見について泉教授は「背景に描かれた世界までマニ教の教義で説明でき
ることが確認されたのは学問的に喜ばしい。私も研究の役に立てて嬉しい」と語
った。
