低誘電率絶縁膜の形成技術を開発
本学流体研究所の寒川教授らの研究グループは半導体理工学研究センターと共同
で、次世代LSIの配線部に使われる低誘電率層間絶縁膜の形成技術を新しく開
発した。
LSIは配線層間に使われる絶縁膜の誘電率によってその消費電力、信号速度に
大きく影響する。そのため、LSIに使用されるトランジスタの小型化に伴い、
絶縁膜の誘電率を低くする必要が生じることになる。現在、主なLSIは45nmの
大きさで、絶縁膜の誘電率は2.3~2.7程度である。しかし、今後その大き
さは2013年に32nm、2017に22nmとなると言われており、それに伴って絶
縁膜の低誘電率化が求められている。
今までは、絶縁膜の材質を分極の少ないものに変え、膜そのものに空洞を空ける
ことで多くの空気を取り込むポーラス化(空気の誘電率はとても小さい)を行う
ことで低誘電率化を図ってきた。しかし強度などの問題から限界があり、32nm世
代以降のLSIに対応できる絶縁膜を作製することはできず、それを克服するこ
とが今後の課題となっていた。
LSIに用いられる絶縁膜はまず、原料となる材料ガスにプラズマを当て励起状
態(原子中の電子が本来の軌道から外れエネルギーが高くなった状態)にする。
これにより、半導体と反応させその上に膜が作られる。この手法はChemic
al Vapor Deposition(CVD)と呼ばれ、現在も最も多く
絶縁膜精製に用いられている手法である。しかし、この方法では原料ガスにプラ
ズマを当てるため、ガス内部で電子衝突が起こり、有害な紫外線も発生する。そ
のため、ガスの過剰解離がおこり絶縁膜の構造を制御することができない。
そこで、今回の新技術開発により、その問題が解決されることになる。この新技
術はLSIの構造そのものを制御することで誘電率を低くしなおかつ、その強度
を保つというものである。開発された手法ではプラズマを使用せず寒川教授が発
明した中性粒子ビームを用いている。これを用いることにより電子衝突、紫外線
の発生を低減でき、エネルギー状態を低くできる。
絶縁膜の構造には誘電率の低く硬度の低いリニア構造、誘電率は高いが高硬度の
ネットワーク構造、その中間の性質を示すケージ構造の3種類があり、この割合
によって絶縁膜の誘電率と強度は決定される。この割合を制御することによって
低誘電率かつ十分な強度をもった絶縁膜の形成が可能になった。
開発された絶縁膜は今後、2017年ごろには実用化が見込まれている22ナノメ
ートル世代のLSIデバイスにも対応可能である。開発された中性粒子ビームに
よる絶縁膜形成技術は現在の半導体業界が直面している問題を解決する革新的な
技術として広く実用化が期待される。
