東北大学新聞:

ビールかけに憧れて!

今年の日本シリーズ、西武×巨人は第7戦までもつれた。

接戦の末、西武は伊原監督の見事な采配により優勝をした。そして試合後のビールかけ。試合の白熱っぷりにテンションがおかしくなっていた私は、気づいたら近くにあった月桂冠を振っていた。そして空けてみたが、酒は噴き出してこない。興奮さめやらぬ私は決意した。「よし、みんなでビールかけをしよう」。
早速、私は大量にビールを用意し、部員を招集した。しかし、部員の1人が「自分たち、未成年なのでビールかけはできませんよ」と言う。「よし、じゃあ未成年達は帰っていいぞ」。その言葉が喉まで出かかったが、ギリギリのところで思いとどまった。そして、「仕方ない。じゃあ全員参加できるようにコーラでやってみるか」、優しい先輩である私は、そう心にもない言葉を棒読みするしかなかった。
結局ビールは使わず、コーラでやることになった。ビールしか用意していなかった私は、コーラの買い出しに行った。コーラ1・5Lを計20本、3回に分けて購入する。店員さんが、「あなたコーラどれだけ好きなんですか」的な目でこっちを見ていたというのは言うまでもない。
コーラで果たしてビールかけの再現が可能だろうか。それを確かめるべく我々は実験をすることにした。
まず、試しに単に振って空けてみることにした。階段から落とす、投げて落とすなど、コーラにこれでもかというくらいのいじめを加える。そして開栓、コーラはあっという間に泡だらけになり、噴き出した。しかし、その力は弱く、液体は物寂しく流れ出るだけ。どれだけ強く噴き出しても怪我をしないようにと、ヘルメット付きの完全防備でコーラを待ち構えていた私にとってはあまりに予想外の出来事であった。
これではとても成功とは言えない、よって我々は作戦を立て直すことにした。まず、問題の1つとして上がったのは力不足だ。「新聞部員ではあきらかに筋肉が足りない。アメフト部に依頼して振ってもらってはどうか」「ただ振ってから空けるのでは限界がある。湯煎などで温めてみたらどうか」「そもそもなんでコーラかけあうの?」「寒いから部室に戻ろうぜ」などと、様々な意見が。そして、部員の1人が「以前コーラにメントスを入れて、コーラが噴き出す動画を見たことがある」。よし、そんな意見を待っていた。じゃあそれやってみるか。ところで、『めんとす』って何だ?
影でぶつぶつ言っていた後輩にメントスを買いにいかせ、我々は再度実験に取り掛かった。前回同様、万全な装備の上、慎重にメントスを入れる。コーラはメントスを入れた瞬間、それまでの暗黒の色から、白灰色に変化し、あっという間にペットボトル口から飛び出す。そして、私はその液体が描く放物線を見事に頭で受け止めた。
数秒後、放物線は消え、コーラは元の黒色に戻った。誰かが、「成功ですね」という。しかし、私はこれで満足してはいない。私の頭の中には常にビールかけの理想像が描かれている。ビールは栓を取った瞬間、直線的に噴き出す。決して放物線を描いたりはしない。
さすがに、湯煎は危険すぎるため諦めるが、もう他に有効そうな手段はない。行き詰ることを想定していた私は、秘密兵器を取り出した。そう、多くの人が小さいころに目にしたことがあるもの、ペットボトルロケットだ。あの発射のエネルギーを水噴射のエネルギーに変換することができれば、成功は間違いない。
早速我々は部室に戻り、製作にとりかかる。誰か1人が、「こんなものがあるなら最初からこれ使えばよかったじゃないですか」とつぶやく。お前は分かっていないなあ。さっきの2つの実験がなかったら、この記事の分量が半分になってしまうではないか。
そして30分後、ようやく装置が完成し、実験を再開した。童心に還りながら、慎重に空気を入れる。暴発の可能性があるため、緊張する。安全性を確かめる試発を何回かした上で、各員配置につく。発射のスイッチを押す人、発射台を押さえる人、羽ばたこうとするロケットを必死で押さえる人、コーラを受け止める人全ての準備を確認し、カウントダウンで発射した。するとどうだろうか、発射台から分離したロケットは、噴射口からすさまじい勢いの空気と水を噴出。そして水は勢いよく直線を描き、私の頭に到達した。
実験は成功した。我々はコーラを使ってビールかけを行うことができることを見事証明した。「よし、じゃあ」と言おうとした瞬間、誰かが「ペットボトルロケットを飛ばして遊ぼう」と言った。そしてみんなは用具一式を持って川内グラウンドへ行き、びしょ濡れの私は1人取り残された。「ふん、お前らは所詮、未成年。そうやって子供らしく遊んでいるがいいさ」。そう言い残して私は寂しく1人、部室のストーブにあたりながら、炭酸の抜けた大量のコーラを飲むのであった。

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