東北大学新聞:

ヨシ由来の重金属吸着剤を開発

本学大学院工学研究科土木工学専攻の中野和典准教授らのグループは植物のヨシを原料とする重金属吸着剤の開発に成功した。

ヨシに簡易な酸処理やアルカリ処理を加えることで製造でき、耐久性に優れていて複数回使用することができる。また炭化させる必要がなく省エネルギーであり、発展途上国における排水処理に効果があると期待されている。
ヨシは湿地に生息する植物で、生長が速い。そのため、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を固定する能力や、水中の窒素やリンなどを吸収し水質を浄化する能力に優れている。また、湿地では様々な生物が産卵し、稚魚や幼虫など外敵に襲われやすい時期を過ごす。生物の多様性を守る点においてもヨシが大きな役割を担っている。
冬になるとヨシは立ち枯れする。水質悪化の防止や、次のシーズンのヨシが生長するのを促進するために刈り取って管理する必要がある。かつてヨシは屋根の原料や燃料などとして利用されていたが、現代ではほとんど利用先がなくなっているためヨシを刈り取ってもごみとなってしまう。さらには利益がないために管理が行われなくなるという問題がある。今回のヨシを原料とした重金属吸着剤の開発は、ヨシの利用先を開拓して積極的なヨシの刈り取り・管理を目指して行われた。
この重金属吸着剤はヨシを粉末状に加工したものを使用。最初にアルカリで処理すると、吸着剤中の水酸基に結合していたイオンと水中の重金属イオンが交換されるようになる。水酸基に結合した重金属イオンは、吸着剤を酸で処理すると再びイオン交換を起こして酸に混ざり、吸着性能が再生する。また、アルカリで処理することで吸着剤の表面がマイナスの電荷を帯びる。重金属のイオンはプラスの電荷を帯びるため引き付けあい、吸着性能を向上させている。
ヨシを原料とした吸着剤は、他の生物由来物質を原料とした吸着剤と異なって、酸やアルカリで処理しても分解しにくい。さらに吸着性能も劣化しないで複数回連続で使用することができる。
さらに、従来の活性炭よりも重金属を効率よく吸着することができる。簡易なアルカリ処理で使用でき、活性炭とは異なり炭化が不要なため、炭化するのにかかるエネルギーを節約することができる。
さらに重金属吸着効果がある生物由来の新素材として杉チップ、もみ殻やワカメ等がある。ヨシと比べて耐久性には劣るが、ヨシを凌ぐ点もある。特にワカメは食用となる部分が全体の4割で、これまで廃棄されてきた残り6割の部分を有効利用する手法と考えられている。
従来のイオン交換膜などは高性能であるが、多くのエネルギーを投入しているため、発展途上国など排水処理にあまり費用をかけることができない場合には使用できなかった。しかしこの吸着剤においては発展途上国でも原料のヨシを入手することが容易で、簡易な前処理で製造でき生産コストも少ないため、鉱山等の排水の処理にこの吸着剤が利用できると考えられている。

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