東北大学新聞:

公開講演会「シベリア アフリカ トナカイとラクダの遊牧民」

12月6日、東北大学片平さくらホールにて本学東北アジア研究センター主催の公開講演会「シベリア アフリカ トナカイとラクダの遊牧民」が開催された。

13回目となる今回は、本学東北アジア研究センター准教授高倉浩樹氏と弘前大学人文学部准教授曽我亨氏により研究成果の発表がなされた。
まず初めに瀬川晶久センター長から挨拶があり、その後、曽我准教授による公演が行われた。曽我准教授の専攻は生態人類学。現在はケニアやエチオピアに暮らすラクダ牧畜民を現地調査し、彼らの生業や民族関係、難民問題を研究している。今回はラクダ牧畜民ガブラの生活や社会、牧畜の技術などをわかりやすく、時にユーモアを織り交ぜながら説明した。
ガブラの人口は約3万人。生活する地域はケニアとエチオピアの国境地帯。年間降雨量は250mmと非常に乾燥している。
アフリカ牧畜民社会の特徴は、ラクダを介したネットワークが形成されていることにある。彼らの所有するラクダのほとんどは相互に貸し借りしたものであるため、直接的で個人的な人間関係が作られている。しかし、近年ではこのネットワークが希薄化しているという問題がある。また、選挙区をめぐる紛争が牧畜民同士で起こるなど、情勢は不安定である。最後に曽我准教授は「アフリカ、そして牧畜民は世界的に見ても周縁化されてきている。農耕に適さない地に住む彼らにとって、ネットワークの崩壊は致命的であり、前途が危ぶまれる」と牧畜民が現在抱えている問題を指摘した。
続いて「トナカイ牧畜民エヴェンの生業文化と技術」と題して高倉准教授による公演がなされた。高倉准教授の専攻は社会人類学。ロシア・シベリアを対象として、狩猟牧畜民の生業や社会変化などを主に研究している。
トナカイは北方ユーラシアから北米北極圏に生息しており、現地の牧畜民にとっては重要な動物資源となっている。極北牧畜民はトナカイのみを飼育しているため、トナカイを肉畜と役畜に分けている。そのほか、牧畜閑期には鴨猟やうさぎ猟、あるいは魚取りをして生計を立てている。
今回、高倉准教授は東シベリア北部からカムチャッカ半島に居住する牧畜民エヴェンの研究を紹介した。エヴェンの人口は約2万人で、その生活様式は極北牧畜民の典型。かつては遊牧生活をしていたが、近年は定住化が進んでいる。また、義務教育の普及による言語のロシア語化が起こり、文化的アイデンティティの喪失が問題となっている。
シベリアという広大な土地の利用法として、トナカイ牧畜は伝統的かつ効率的な手段であった。しかし、ロシアでのトナカイ牧夫の収入は最下層にあり、牧畜業の人気も落ち込んでいる。近年では、追い討ちをかけるようにシベリア地域での資源開発が活発化している。
高倉准教授は「アフリカのラクダ牧畜民同様、シベリアの牧畜民も危機に立たされている。資源採掘による生活空間の破壊は彼らにとって死活問題である」と警鐘を鳴らした。

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