東北大学新聞:

白頭山噴火の謎を研究

本学東北アジア研究センターの谷口宏充名誉教授を代表とする研究グループが中朝国境にある「白頭山(中国名:長白山)」の調査研究を行っている。

白頭山は活火山で、標高は2744メートル。山頂付近は白い火山堆積物で覆われている。また、冬季には積雪もあるため、一年中山頂が白く見える。頂上にはカルデラ湖(火口跡にできた湖)がある。
開始当初、谷口教授らは、10世紀に起きたとされる白頭山の大噴火について現地調査を行った。この大噴火のマグニチュードは7・3と推定されていて、過去2千年間では世界最大の火山噴火。しかし、10世紀噴火に関する明確な文献資料は発見されていない。一方で、地質調査から大噴火は朝鮮半島だけでなく、中国東北部や日本にも多大な影響を及ぼしたと考えられている。特に、926年に滅亡したとされる王国「渤海」との因果関係が長く白頭山の謎とされてきた。
渤海は10世紀前半まで中国東北部から朝鮮半島北部にかけて栄えた王国である。しかし、突如契丹系の遊牧民に滅ぼされる。
この事実を受けて、今から約20年前、東京都立大の町田氏により「白頭山噴火による渤海滅亡説」が立てられた。谷口教授は火山学的な見地からこの仮説の検証を試み、同時に古文書などの文献調査を行った。
当初、中国吉林大学の研究者と合同で現地調査を行い、その後北朝鮮、韓国の研究者が加わって国際研究チームを形成。調査は中国と北朝鮮の国境地帯という厳しい制約の下行われた。地質調査は現地の協力が必要不可欠であるため、特に困難を極めた。
調査を進めるにつれ、噴火の推移や、山体の構造など今まで解明されなかった白頭山の細部が徐々に明らかになった。衛星画像をもとに作成した赤色立体図により、白頭山の火山体は蓋馬(けいま)台地と呼ばれる巨大な溶岩台地上にあると確認。その他、白頭山周辺には単成火山帯という比較的新しい無数の小火山体の存在も分かった。結局、文献調査では渤海の滅亡と白頭山噴火を結びつける決定的な証拠は見つからなかった。しかし、現地の地質調査から、10世紀の噴火は2度起きていることが判明。ただし、いずれの噴火も渤海の滅亡年とされている926年からは後であるため、渤海の滅亡と白頭山噴火の関連性は極めて薄いことが分かった。
2005年11月、谷口教授の白頭山研究に大きな転機が訪れた。突然北朝鮮から日本火山学会あてに、白頭山における火山活動の共同調査の依頼が届いたのだ。その趣旨は、近年白頭山で地震活動が活発化するなど、不穏な動きが続いているため、実績が豊富な日本と共同研究をしたいとの申し入れだった。
中国地震局の情報から、北朝鮮の主張は確からしいということで、谷口教授は早速調査を開始した。その結果、衛星からの資料にもとづき、04年から05年の1年間に2cmの隆起が確認された。また、仮に白頭山が噴火した場合、大規模なラハール(土石流)が発生し、近隣の都市に被害を及ぼす可能性も認められた。
しかし、本格的に研究に取り組もうとした矢先、北朝鮮によるミサイル発射や核開発問題が発生。日朝両国間の国交は事実上断絶したため、研究は中断を余儀なくされた。今後は、日本国内において、でき得る限りの研究を続けていく。
最後に谷口教授は「日中朝韓において、自由に学問の交流ができるようになる日がきてほしい」と今後の研究の発展と、学術交流の活発化を期待していた。

白頭山写真

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