東北大学新聞:

372号 一言居士

新書ブームが巻き起こり久しい。03年の「バカの壁」大ヒット以来、書店の新書コーナーでは話題の新書が絶えずせめぎあい、累計発行部数を喧伝するポップは新書コーナーの定番となった。

最近では若干下火の感もあるが、今や一般大衆に最も親しみ深い教養の一つと言えるだろう。
さて、新書と言えばそのタイトルで売り上げが左右されるほど、タイトルが重要な要素となるものらしい。実際、新書のタイトルには奇を衒った極論や断定口調が多用されている。それを儲け主義の安易な大衆迎合と捉えるのは間違いではないが、その背景には現代を反映する注目すべき論点がある。
なぜ、新書には極端な断定形式のタイトルが多いのか。それは消費者が求めるからである。では、なぜ人々は極論を欲するのか。不安だからである。
現代は、IT社会ゆえ情報に翻弄され、またグローバリゼーションの浸透から人々が確固たる居場所を失った不安の時代である。人は、価値観の多様性に触れ、選ぶべき道の幅広さに直面すると、不安に駆られる。どのようにでも在り得るという可能性は、選択の必然性という動機を要請するが、アイデンティティなき現代人はそれに応えられない。そして、生き方に迷った現代人は新書の自信に満ちた断定口調に希望の光を見出すのである。
このように、最近の新書のタイトルには、現代人の漠とした不安感が影を落としている。かくいう私も新書を愛読する一人であるが、現代の極論偏重の主張スタイルには異議を唱えたいものだ。

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