東北大学新聞:

ワクワクドキドキ1000円ピッタリ!量り売り

目下、豚に話題をさらわれているものの、「食」にまつわる出来事は尽きることをしらない。

もったいない、ギョウザ、スローフード、メタボリックシンドローム。そんなメディアが喜ぶネタに限らず、ダイエット期間中だとカロリーを気にしたり、床にこぼしても3秒ルールだからと素知らぬ顔で煮豆を食べたり、と「食」は会話のネタに事欠かない。もっとも僕ら東北大学の者たちにとって「食」で身近なものといえば、生協食堂を脇に置いてはいられない。正午を回った食堂の喧騒はどこもうんざりするものだが、「1g当たり1.26円」と貼られた量り売りコーナーで立ち止まり、思った部員がいた。「1000円分はどれほどのものだろうか」。そんな馬鹿らしい好奇心から、報道部はある日の午前8時、第一食堂に集まった。
お盆1枚、皿1枚。恥はかき捨て、いざ量り売りコーナーへ。2年生の焼き肉大好き富良井は揚げ物を中心に1000円分食べるつもりらしい。想像できるように、単色で茶色だ。アメリカンドック3本とカニクリームコロッケ3つ、クリームワッフル3つ、ミートボール5つを皿に敷きつめ、その上にホットケーキ1枚と目玉焼き1枚が乗っているのは、見ただけでうんざりする。対する3年生、堀川は今流行りの草食男子で、野菜を盛りに盛る。ひじき、れんこんの金平、切干大根、ほうれん草の煮びたし、かぼちゃのそぼろあんかけ。飾り程度にとうもろこしを振る。盛ってから後悔した。犬が食べる物ではないのだから、もう少し盛り方というものがある。
周囲の好奇の目を背に、箸を運ぶ。こうして一式食べ比べた事は初めてだが、どれもおいしい。ひとえに食堂のおばちゃんたちのおかげだ。僕、アメリカンドック大好物なんですよ。このほうれん草はいい味出してるな。朝に目玉焼きなんて久々です…。威勢良く食べ始め、皿の上が周りの学生の皿と違和感なくなったとき、違和感は2人の体内へ。フードファイターのような威勢はかっ消え、グルメライターよろしく品評する口は回す暇があるなら咀嚼しろ、と時計がいう。1時限目の授業があるのだ。箸をつけてから、もう30分が経つ。うかうかしていては鐘が鳴る。揚げ物で喉が渇く。水が進む。水道水だろうが、還元水だろうが関係がない。激辛カレーを食べた後、水を飲み干す気分に似ている。「富良井、ミートボールくれ」。これも自然な感覚。飽きた。「代わりにかぼちゃ食べて」。かぼちゃは腹にたまる。「堀川さん、アメリカンドックにしてくれません?」。「いや」。
昼ごはんを食堂で済ますことは日常茶飯事。正午の喧騒に「いただきます」と「ごちそうさま」がか細く聞こえるのは気のせいだろうか。そんな麻痺した感覚にスパイスを。堀川は9割5分にふくれた腹を抱えて青葉山の傾斜を登りながら、富良井1時限目の講義室目指して飛ぶように駆けながら、1000円と食材の重みを肌ならぬ腹で感じていた。

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