魯迅の受講ノートを解析 恩師「藤野先生」との交流を明らかに
本学経済学部の大村泉教授らのプロジェクトチームは、中国の小説家魯迅の仙台医学専門学校(現在の本学医学部)在学当時の解剖学ノートの解析を行った。
このノートには、魯迅の著作「藤野先生」で知られる藤野厳九郎が、留学生であった魯迅のために内容の添削を行っていた実際の様子が残されている。
大村教授らは、中国の魯迅博物館から、解剖学ノートの電子複製版を譲り受け、それを基に魯迅の手書きの文字、また藤野によって入れられた添削内容の活字化を行い、その様子を分析した。そこからは、授業を理解できていないとも受けとれる初期のノートの状態から、藤野の添削を通して魯迅が優れた才能を発揮していく様子がうかがえるという。
また「藤野先生」に魯迅自身の回想によって書かれた内容との差も見られ、魯迅や藤野の人柄を探る上で興味深い研究成果となった。たとえば、「藤野先生」には藤野が魯迅のためにノートの添削を開始したのは、魯迅の入学の約1週間後と書かれているが、今回の解析の結果、実際は約2カ月後であったと推定される。
藤野の添削は専門的内容だけでなく、句点や言葉遣いなど事細かな日本語表現にまで及んでいる。このことから、藤野は魯迅という一個人への好意だけから添削を行ったというより、魯迅ら留学生を通して自分の医学の教えが中国全体に伝わることを意識していたと考えられる。
今回の研究成果は、9月にアモイ大学にて、学会やパネル展を通じて発表された。現地では魯迅と藤野の双方の孫にあたる人物の対談も行われ、人々の関心を集めた。北京魯迅博物館・アモイ大学でそれぞれ行われたパネル展の開会式では、日本の公使や総領事が丁重な祝辞を述べるなど、外務省の魯迅に対する高い関心が示された。
今回の研究成果について、大村教授は、「これはあくまで基礎研究である。今回の成果を基に、これから魯迅に興味をもった人々が、新たな魯迅像を作り上げていって欲しい」と語った。
